ある私立小学校に通う保護者の方からこんな相談がありました。
そこで、返ってきた言葉に驚きました。
「注意をしても改善されることがなければ、退学などの厳しい措置をとります。」
私は、わざわざ高い学費を払ってこの学校に通わせていることに後悔しました。ところが、そんな事があったと、ママ友にお伝えしたところ、「ちゃんと対応を考えてくれているじゃない?」と言われてしまいました。
私の感覚は、どこかおかしいのでしょうか。
この様な話は、今回に限らず、これまでにも何度か耳にしてきましたので、ここで、次の様なことを考えてみたいと思います。
- 学校がいじめに対して厳しい措置をとると言ったことは正しいのか?
- 学校や担任からの返答に納得できない場合、どうすればいいのか?
私は、公立学校で15年担任として仕事をしてきましたので、教員や学校の考え方も踏まえながら詳しく解説します。
【結論】退学などの措置をとったところでいじめは解決しない
まず、「注意をしてもいじめが改善されることがなければ、退学などの厳しい措置をとります。」は、どうするかを伝えただけで、教育ではありません。
ですから、
わざわざ高い学費を払ってこの学校に通わせていることに後悔しました。
という感覚をもって当然のことです。
そもそも、いじめをしたら退学処分にするぞ!というのは、恐怖によって行動を制限させようとしているだけであって、子ども自身の成長を促すものではありません。
本当に、こうした厳しい処分が効果をもたらすのであれば、とっくに「いじめ」はなくなっているはずです。
なぜ、こうもはっきりと言えるのか、詳しく解説します。
ルールを決めただけでは学校からいじめがなくならない!
残念ながら「いじめ」によって命を絶ってしまう子ども、学校に登校できなくなってしまう子どもが後を絶ちません。
当然、子どもにとってはとても重要なことであるために、何とかして解決しないといけないことですが、実際には、「体裁優先になっている」印象があります。
学校は法を遵守しなければならない
いじめに関する立派な法律があります。
いじめが社会的にも大きな問題となった後に制定・施行されました。
分かりやすい部分を取り上げると、
- 児童等は、いじめを行ってはならない。
- 学校におけるいじめの防止等のために必要な措置を講ずる責務を有する。
- 児童等がいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。
(いじめ防止対策推進法より抜粋)
ということで、めちゃくちゃ簡単に言えば、
- いじめは絶対にしたらダメ。
- いじめが起きないように学校は事前に手を打っておけ。
- いじめがあったと思われた時には、すぐに対処しろ!
もし、これらが徹底して守られているのであれば、「いじめ」は完全になくなるはずです。
ところが、いじめ防止対策推進法(平成25年・2013年)が施行されてから、約10年が経過していますが、いじめの勢いはエスカレートしている様に感じます。
つまり、
ということです。
厳しい表現になってしまいますが、この法律が施行された時に、深く歴史を理解している教員や子ども達はこんな話をしていました。
法律を定めたら社会が変わるって本気で上の人は考えているの?
もう少し、深く歴史を見たら分かるのにね。
法ができたことは大きな進歩だが、法が全てではないぞ。
子どもの気持ちが優先だから、対策をしたからいじめがなくなるなんて思わないで仕事をしてくれ。
こんなことは分かっていたことですが、いじめ防止対策推進法を守るための業務がたくさんあり、結果として、いじめ対策をした気分になっていたというのが、現場の正直な感覚でしょう。
実際には、いじめ防止対策推進法が施行され、次の様なことがすぐに開始されました。
- いじめに対する対策方針を学校ホームページにアップする。
- いじめに関するアンケートを実施する(子ども達全員が対象)。
- いじめがあると答えた子どもには、個別に詳細を聞く。
いじめの早期発見をするには、ある程度有効な手立てとなりますが、こうした取り組みに対する理解が、先生や学校によって温度差が出てしまったのも事実です。
先に触れた、「注意をしてもいじめが改善されることがなければ、退学などの厳しい措置をとります。」と答えた小学校は、
という理解をしてしまっている様に見えます。
いじめに関する報道を見ていても、「学校としてできることをした」を前面に出している学校が多いという印象を受けます。
いつの間にか、「いじめを減らすための法律」が学校を守るための道具に変わってしまったのです。
なぜ、こんな風に変化してしまったのでしょう。
万が一問題があれば、組織全体が叩かれてしまうリスクがある
この報道が正しいとするならば、学校の対応があまりにも遅すぎる上に、何も対策をしようとしていなかったと感じられます。
様々なメディアが殺到し、対応を迫られることは、学校としては、当然、避けたいことです。
この様な事態を避けるためにいじめ防止対策推進法が使われている様に見えることが多々あります。
つまり、
いじめ防止対策推進法にしたがって、毎年アンケートも行い、子ども達からも聞き取り調査をしてきたんだ。
それでも、いじめが発生してしまったんだ。仕方がないじゃないか。
こういう為の材料になってしまい、一番、見ないといけない子どもの姿が、見落とされているように感じるのです。
素晴らしい学校の先生方は、形式よりも子どもを見る
幸いにして、私が勤務してきた学校には、素晴らしい先生がたくさんいらっしゃいました。
少なくとも、「いじめがある」という話を耳にして、「注意をしても改善されることがなければ、退学などの厳しい措置をとります。」とは答えません。
何か罰則を与えて、行動を管理しても全く意味がないためです。
ですから、
- なぜ、いじめると行為をするに至ったのか?
- いじめをしてどんな気持ちになっているのか?
この2点を深く見ようとします。
私自身もいじめに関係する子ども達の家に夜何度も訪問したものです。
こうした経験から言えることは、
ということです。
もちろん、ここに至るまでには、膨大な時間がかかることもありますが…。
いじめに対して学校や先生の対応に納得ができない場合は?
では、学校や先生の対応に納得できない場合は、どうすればいいのでしょう。
- 担任の先生の対応に納得がいかない場合→校長先生・教頭先生に相談する。
- 校長先生・教頭先生の対応に納得がいかない場合→教育委員会に相談する。
躊躇する必要は全くありません。
担任がいじめがあることを管理職に伝えてない可能性もある
学級担任をしていると、当然「いじめが自分のクラスであって欲しくない」と思うものです。
何となく、クラスでいじめがあると、教師間でも
- 指導力が不足しているのではないか?
- 学級経営が下手ではないのか?
こう思われるのではないかと考え、うすうすいじめがあると感じていながらも、管理職(校長・教頭)に報告しない学級担任もいます。
ですから、
というのが、解決への近道です。
いじめに対して校長先生・教頭先生の対応に納得いかない時は?
また、校長先生・教頭先生に話をしても、納得のいかない返答が返ってくる場合があります。
こうなると、教育委員会に事情を話すことをオススメします。
そんなーおおごとにしたい訳じゃないのよ。
こう思われる方もいらっしゃいますが、
- いじめがあると感じていること事態がおおごと
- 教育委員会も守秘義務があるために、希望に沿ってくれる
ために、安心して相談することができます。
学校や先生に言いたいことがある時【苦情を伝える手順とコツ】の記事も参考にしてください。
最後までお読みいただきありがとうございます。
「いじめた子は退学などの処分をする」というのは、私立学校だからこそ言える言葉だなぁと思うと同時に、子どもを育てる気があるのか?なんて思いました。
いじめは絶対に許されることではありませんが、子どもはたくさん間違ったことをしながら成長するものです。
その間違いをどう正していくのかを考えることが、教育だと思うのです。
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