【子育て】ゲーム以外に興味が持てない子どもとどう接するか?

子育ての悩みの大きなウェイトを占めるのが、ゲームやSNSとの付き合い方。

大人はなんとかして、子どもをゲーム・SNS(スマホ)から遠ざけようと、様々な方法を試すけれども、どうも上手くいかない。

以前、次の様な質問をいただいたことがあります。


何とかしてゲームから子どもを遠ざけようとして、

  • テーマパークにでも行こうか
  • 魚釣りにでも行こうか
  • 美味しいものを食べに行こうか…など

いろいろ提案しますが、ゲーム以外のことには全く興味を示しません
いろいろ本を読んでみると「ゲームは好きなだけやらせたらいい。いずれ飽きる。」などと書かれていましたが、全くゲームに飽きる気配がありません。
どうしたらいいのでしょう。


詳しく話を伺うと、この子は中学3年生で、高校進学を希望していますが、成績は悲惨な状態で、ゲームを好きなだけさせてやれる余裕はないとのことでした。

この様な場合、次の様な疑問があるはずです。

  • 本などに書かれている「好きなだけゲームをさせる」は、本当にいいのか?
  • 入試など重要なタイムリミットがある場合には、どの様にすればいいのか?

これらについて、深く考えてみたいと思います。

私がこれまで、学校現場で関わってきた子ども達の様子を踏まえると…

ゲームを好きなだけさせても良い子ども強制的に辞めさせた方が良い子どもがいる。

これについて深く理解しておくことがとても大切です。どういことか解説し、今回のケースの様にタイムリミットがある場合、どう対処すればいいのかも紹介します。

 

目次

どの子も求めるものは、面白さと自己表現【それを満たすのがゲーム】

まず、多くの子どもは、なぜゲームに没頭してしまうのか?これについて、整理しておきます。

  • 単純に面白いことがしたい。
  • ゲームの世界では、日常と違った人と出会え、自己表現がしやすい。

つまり、簡単に面白さが感じられて、自己表現ができる場がゲームの世界ということであって、ゲーム以外にこれを満たすものがあれば、それでも良いということです。

詳しくは、不登校の子どもがゲームに逃げる本当の理由と改善策の記事でも紹介しています。

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ただ、ここで考えてみたいのは、

  • ゲームを好きなだけやらせても、飽きを感じ、現実の世界を大切に考えられる子
  • ゲームを好きなだけやらせると、没頭し過ぎて現実の世界に戻るのが困難な子

がいるということです。

一体、この違いはどこから生まれるのでしょうか。

 

深く「楽しい」という経験の有無でゲームとの付き合い方を変える

学校現場で様々な子ども達を見ていると、ゲームによって、生活がゲーム中心になってしまう子どもと、適度な距離感を維持しながら、スポーツなどにも関心を寄せる子がいることが分かります。

ゲームに没頭してしまい生活がゲーム中心になってしまう子の特徴

ゲームに没頭し、ゲーム以外のことには興味を示さない子どもの過去を遡ってみると…

  • もともと聞き分けのいい子だった。
  • 親が勉強に力を入れていた。
  • 子どもだけで屋外で遊んだ経験が少ない。

という傾向が見られました。

つまり、

心の底から「うわぁ、楽しい!最高!」の経験が少ない子ども

ということです。なぜ、この「楽しい!最高!」とゲームとが関係するのか解説します。

深い楽しみ・満足感を得るには、その前の障害を乗り越える必要がある。

例えば、友達とサッカーをして遊ぶとしましょう。

サッカーをして遊ぶ以上、誰だって勝ちたいし、格好いいプレーもしたいものです。

ところが…

  • そもそも公園でサッカーを楽しむ程、人が集まらない。
  • 少人数でも楽しめる独自のルールを作らないといけない。
  • 最初から格好いいドリブルやシュートは打てない。
  • サッカーが上手い人がいるとなかなかボールが回って来ない。

最初は、全く面白くない要素がたっぷりとあるのですが、これらの問題を乗り越えて、楽しくサッカーができ、勝負に勝てた時に、深い満足感が得られます

 

サッカーと比べるとゲームの方が遥かに簡単で面白い

では、ゲームの場合はどうでしょうか。

とりあえず、ゲームソフトを起動させれば、なんとか遊ぶことができます。

もちろん、ゲームが上手になるにはそれなりの時間が必要ですが、サッカーの様に「全く面白くない」「そもそもサッカーにすらならない」という状態に陥ることはありません。

とりあえず、面白い映像の世界観を楽しむことができます。

つまり、「面白くない」と感じるリスクは小さくてすみますが、その分「最高!」と心から感じる度合いも低くなってしまうということです。

サッカーとゲームの楽しさの度合い(イメージ)

サッカーとゲームの楽しさの度合い(イメージ)

「最高!」の度合いを何かで測定することはできませんが、サッカーで負けてしまった時に泣いてしまう小学生を見ることはありますが、ゲームをしていて泣いてしまう子は滅多に居ないということは、喜びの深さも違うだろう…と考えられそうです。

 

ゲームに夢中になることもあるが、ある程度すれば飽きを感じる子の特徴

時々、ゲームに夢中になって、「ゲームばかりして!」と叱られることがあっても、やがて飽きを感じる子どももいます。

その様な子どもの過去を遡ってみると、ゲーム以外に夢中になった経験が豊富にあるという傾向が見られました。

例えば…

  • サッカーや野球など、何らかのスポーツをしている。
  • 本を読むのが好き。
  • 友達と屋外で遊ぶのが好き。

これらは、やり始めた瞬間から「楽しい」と感じることはあまりありませんが、先に触れた様な障害を乗り越えると、大きな「満足感」が得られる可能性が高いです。

私は、これをアナログ的な活動と呼んでいますが、アナログ的な活動の経験が多い子は、ゲーム以上の深い満足感をしっているために、ふとした瞬間にこう気付くのです。

このゲーム、いつまでやってても大して面白くないよなぁ…

こう感じる基盤があるかどうかで、対応策は大きく変わってくるでしょう。

 

ゲームにしか興味を示さない中学生の思考とは…?

ここで、ゲームにしか興味を示さないある中学生が日頃の遊びに対してどう考えているか、紹介します。

  • ゲーム以外の遊びは、面白いかもしれないけれど、面白くない可能性もある。
  • ゲームをすれば、必ずまぁまぁの面白さを感じることができる。

一言で言えば、彼の場合は、ゲーム以外の遊びは、楽しめるか・楽しめないか分からないので、

ゲーム以外のども遊びも、リスクが大きい

と見ていたのです。この状態で、いくら「ゲームばかりしていないで、辞めなさい」と言っても、伝わらないのは明確です。

この様な子どもに、専門家が言う様な優しい言葉「夢中になれるゲームなら好きなだけやったらいい」なんて言葉を掛けると、現実世界に戻す作業が大変になってしまいます。

 

私が行っている「子どもをゲームから引き離す」方法

子どもをゲームから引き離すのに、万能な方法はありません。

これまで見てきた様に、子どもによって経験してきた「楽しさの深さ」「満足感のレベル」が違うため、様々な策を考える必要があります。

ただし、いずれにしても確実に言えることは、

アナログ的な活動をたくさんして深い楽しみ・満足感を体験させる

ことは必須です。

なお、今回相談されてきた方の様に、高校入試までの期間が短いという場合には、のんびりとアナログ的活動をする時間を確保するのも困難になってしまいます。

ある程度、アナログ的活動をしてきた子どもの場合

子どもの過去の経験を把握しながら、ある程度アナログ的な活動経験が多い場合は、多少、無理矢理であっても、強制的にゲームができないように取り上げるのも一手です。

ただし、取り上げた以上、ゲーム以外の楽しみを大人からも提案し、実現させる覚悟をもっておくことは必要です。

私の場合は、息子の脱スマホを強制的に行ったことがあります。

詳しくは、子どもがスマホに依存して困ります【自己管理できる様にした具体策】で紹介していますので、参考にしてください。

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アナログ的な経験が少なく、ゲーム以外に関心が向かない子の場合

ゲーム以外に関心が向かない子の場合、ゲームを強制的に取り上げても、その意図を理解してはくれません。

今回の相談者さんの場合は、高校入試までの期間も短いということで、次の様な形で対応することにしました。

  1. 遅れた勉強は教え、基礎的な学力を高める。
  2. 週に1度は、アナログ的な活動を楽しむ時間を確保する。
  3. 夏休みには、さらにスケールの大きなアナログ的活動をする。
  4. スマホ、ゲーム時間は毎日報告する。

具体的には、

  • 自転車で2時間ほどかけて少し遠出をしてみる。
  • 料理を作ってみる。
  • 野菜を育ててみる。
  • 山に登ってみる。

こんなことを行っています。ゲームの面白さと比較すると、こんなことは何の面白みもありませんから、やり始めるまでは、苦痛にしか感じないようです。

それでも、無理矢理、これらのことを一緒に行いました。

その結果…

マナブくん
マナブくん

俺が育てたキュウリは結構うまいやろ。

どのタイミングで収穫するかが、めっちゃ大事やねん。

マナブくん
マナブくん

いつも電車で行ってたショッピングモールは自転車で行っても余裕やわ。

こうしたことを、家の人に話すようになってきました。

ほんの少し、ゲーム以外のことでも自分の良さを表現できるようになってきました。

まだまだ、ゲームに費やす時間は多いですが、「魚釣りに行ってみたい」「もう少し遠くまで自転車で出かけてみたい」ということを言い出すような変化は見られました。

絶望的だった学力もなんとか、最悪の事態は回避できそうなところまで回復してきましたが、学力は、まだまだ高まる余地がありそうなので、あと半年頑張ろうと思います。

 

子育ては本来試行錯誤の連続!楽をするとそのツケが来る

実は、相談者様の子と関わることになって、意識したことは「本来の大変な子育てをもう一度行う」ということでした。

彼の場合は、家庭の経済力も高かったこともあって、小学生の時から、

  • 毎日の様に学習塾に通っていた。
  • 成績さえよければいいという風潮の私立小学校に通っていた。
  • 勉強に忙しく、隙間時間にはゲームをして過ごしていた。

こうした日々を過ごしていたために、家庭でも学校でも、深い楽しみを味わうアナログ的な活動をほとんどしていなかったのです。

既にお分かりの通り、アナログ的な活動を子どもにさせるとなると、

  • 怪我をするリスクがある。
  • 友達と大喧嘩するリスクがある。
  • 大人が付き合う場合、大きく時間がとられ、疲労する可能性がある。

こうした問題が考えられます。スマホやゲームを買い与えた方が随分楽です。

ところが、子どもは本来、こうしたリスクにさらされながら大きく成長するのではないでしょうか。

現代の大人は、非常に多忙ですが、子どものリスクのために大人のエネルギーも使うということにも意識を向けるべきだと考えます。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。

「大人がリスクを避ける思考をしている」ということを現代の子ども達も鏡の様に映し出して教えてくれているように感じます。

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この記事を書いた人

公立小学校で15年勤務した後、退職。
現在は、アメリカ・香港・ペルー・インドネシアなどの小・中学生に日本の教育を届けている。日本の文化と住まい・暮らし方との関係を追求し、建材メーカーと共に日本の暮らしを研究している。
「なぜ、人は学ぶのか?」「学ばないといけないのか?」元教員の視点も交えつつ子育てに関する情報を発信している。

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