新年度や新学期が始まると、「さぁ頑張ろう」と新たな気持ちになる人も多いはずです。
そんな中で、時々耳にする言葉が、
- 教科書って本当に必要なの?
- 教科書レベルって大したことないよね。
という言葉です。
どことなく教科書に書かれている内容は標準的という印象が強いようです。
実際に、ある私立中学校では、教科書は配布するものの、授業のほとんどは別で購入したワークを中心に授業をされていました。
うちの学校は、今、優秀な高校への進学率を高める取り組みをしています。
教科書程度のことは、さっと済ませて、ハイレベルな学習をすることにしています。
つまり、学校・先生も心のどこかに「教科書レベルは大したことがない」という感覚があるようですが…
のです。なぜ、教科書を雑に扱ってはいけないのか?
小学校の算数の教科書の制作にあたり、研究に関わってきた経験も交えて詳しく解説します。
教科書を使うことが学力UPの基本だと断言できる理由
小中学校の教科書は、無料で誰でも手に入れることができるためか、教科書の存在に感謝する人が少ないように感じます。
名のある学校への進学率を意識している塾や学校の先生方と話をしても、教科書の価値に気付いていない方が多い様に感じますが、それではあまりにも勿体ないのです。
【事例】教科書レベルなんて…という姿勢の学校は学力が悲惨
いつくかの私立小学校・中学校に共通する事例を紹介します。
有名難関中学・高校への進学率を売りにしている学校も少なくありません。
学費が多少高くても、有名校に進学できるなら…と期待をして入学される方もたくさんいます。
ご存知の通り、有名校の入試問題は、発展的な問題が多いのが現状です。
この発展的な問題を克服するために、次の様な指導をされる学校がいくつかありました。
- 授業は教科書の内容を理解しているものとして、難しい問題を扱う。
- 受験時期が近づくとひたすら赤本の問題を解かす。
- 赤本の問題が解けない子どもには、放課後に残し、再度赤本の問題を解かす。
という技を使ってきます。
これに気付いた何人かの保護者の方は、担任の先生に相談をしたところ…
先生、うちの子、赤本の答えを覚えているだけで、くわしく話を聞くと全然内容が理解できていないことが分かりました。基本的なところから指導をしてください。
お母さん、そういった基本的なことは塾で教わってきてください。
と返答されてしまいました。
ところが、実績を重視する塾では、どうしても「考え方」よりも「問題が解けること」が重視されてしまうために、考え方を誰かに伝えるという機会がほとんどないのが現状です。
実際に、こうした小学校の子どもの保護者の方、数名から私は相談を受け、子ども達に様々な問題の説明を求めましたが、残念な結果でした。
20×(12ー4)=20×12ー20×4
になる理由を質問する問題なんて見たことがないわ。
そうなるって覚えておきなさいって、学校の先生も塾の先生も言ってたから、そういうものってことでいいんじゃない?
これでは、残念ながら、いくら赤本の難しい問題を与えても自力で解くことができるようになりません。
年度の終わりには、この学校の子ども達に、「教科書を使って勉強したの?」と聞いてみましたが、「教科書は使ったことがない」と答え、新品に近い状態の教科書を見せてくれました。
教科書以外の問題集・参考書は説明部分がコンパクト
こちらの画像は、小学4年生が使う問題集の一部です。
「計算のきまり」の発展的な内容が、この様に書かれていますが、
決して、この問題集が悪いという訳ではありません。
「上の様な式が成り立つ理由は分かるよね。じゃあ、実際に問題を解いてみようか。」という意図で作られていると思います。
この前段階の部分は、教科書にしっかりと書かれていますから。
つまり、当たり前のことですが、
ということです。
レベルの高い問題集ほど、基本的な部分は省略されコンパクトにまとめられているので、扱いには注意が必要だということです。
あなたは、上の○や★に数字を入れて、計算ができれば「賢いなぁ」と感じるでしょうか。
私は、
- なぜ、この様な式が成り立つのか疑問に感じる。
- この様な話になる場面を想像できる。
こうした子ども方がはるかに賢く、様々なことを創造する力があると判断します。
難しい問題にたくさん挑戦し、解くことができたとしても、「基本的なことが分かっていない」ということが起きるのは、教科書を雑に扱い、この様な問題ばかりに目を向けるために起きるのです。
うちの子も同じような状態だわ。
教科書が新品の状態で出てきたし、塾でも全く教科書は使っていないから。
でも、教科書ってそんなに凄いものとは思わないけど…。
教科書が完成するまでに膨大な議論・実践が行われている。
教科書を作成するために、多くの人が関わり、様々な議論・実践が行われています。
教科書の最後のページには、作成に関わった学校の学校長・大学教授の名前がズラリと30名以上(小学校算数の場合)並んでいます。
これだけ多くの専門家の方が関わって作られている問題集・参考書が他にあるでしょうか。
実際に、私も教科書作成にあたり、大学教授と「何倍でしょう」「割合」などの単元について研究と実践をしたことがありますが、大変でした。
- A案の図を使って授業を行うと子ども達の理解はどうなるか?
- B案の図を使って授業を行い、A案と比較してみるとどうか?
- 子ども達の発言を分析的に見て、本質的な部分が理解できているのか?
教科書で言えば、数ページくらいにしか掲載されない部分であっても、この様なことをいくつかのクラスで行うのです。
当然、子どもの思考は一人一人様々ですが、トータルに見て、どの様な形で学習を進めていくのが総合的にいいのか判断しくという作業が行われているのです。
つまり、教科書は、
ということで、膨大な予算がつぎ込まれていることも分かるかと思います。
繰り返しになりますが、ここまでして作られている冊子は、他にはありません。
上を目指したいのであれば、後で問題集を購入する
様々な学校の授業を見たり、先生方と話をしてきましたが、
もちろん、算数・数学で言えば、公式を覚える様に伝え、それに数字を当てはめたところで、それは「情報処理」をしているに過ぎないのです。
いくつかの問題を解きながら、法則を自分なりに見つけながら、公式を作り出す様な学び方をして初めて「創造力」が育っていくのです。
これらの作業が行いやすい様に構成されているのが、教科書です。
ですから、ハイレベルな学習でも十分理解できる様になりたいのであれば、教科書を理解した上で、問題集に取り組むという順序が非常に大切です。
残念なことですが、実績重視の学校や塾の指導は、情報処理の要素がかなり強いために、その様な雰囲気を感じた時には、すぐに指導者(担任の先生・塾の先生)に声をかけたいものです。
その様な場合は、学校や先生に言いたいことがある時【苦情を伝える手順とコツ】の記事も参考にしてください。
実は、4・5月中に教科書を全部眺めておくことはかなり有益
ここからは、かなり学力をつけたい場合の話になります。
ことをオススメします。
ここでは、理解できる・できないは一切問いません。
ざっくりと全体的にこういう勉強をするのか…と知って授業を受けるのと、知らずに授業を受けるのでは、雲泥の差があるためです。
これは、スポーツを例に挙げると、大変分かりやすいです。
例えば、サッカーというスポーツがどんなものか全く知らない子ども達に、
- 手を使ってはいけないというルールがある。
- ボールは足で蹴って、前に運んでいく。
- ドリブルという技がある。
この様なことを教えて、ボールを蹴る練習をしたところで、面白くもなければ、何のために蹴る練習をしているのかも分かりません。
ところが、サッカーをしたことがない子どもでも、プロのサッカーの試合をテレビで一度でもみれば、ボールを蹴る練習は必要だということはイメージすることができます。
学校の勉強もこの様なイメージです。
でも、教科書を読みなさいって言ったところで、読まないでしょ。
ですから、少し手間ですが、
と言って、子どもと一緒に、教科書を眺める時間を作ります。
1日で1冊も見る必要はありません。5分程度、パラパラと子どもと教科書をめくって「懐かしいなぁ」などを雑談を数日行えば、十分です。
俺は忙しいんだ。
そんな時間も取れる訳ないだろう!
こう思われる方もいらっしゃいますが、これをするだけでも、かなり学習効果は高まるので、頑張って5分を捻出して欲しいと思います。
塾代を稼がないと…大人が頑張るのもいいですが、親子の時間を設けるという意味も含めると一石二鳥です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
高校生になった時、物理の教科書を4月に読んで衝撃を受けたのを思い出します。
世の中の多くの現象が数式で表現されているなんて…。
それ以来、大人になっても物理・数学が大好きです。
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