【ベストな褒め方】ご褒美は有効か?実験データをもとに解説

どの様にして子どもを褒めたらいいのか?

親であれば、誰もが一度は悩んだことがあると思います。

一般的には「子どもは褒めて伸ばす」と言われますが、ただ言葉通り鵜呑みにして褒めまくると、【子どもの褒め方】やってはいけない褒め方【タブレット学習も関係あり】の記事で紹介した方の様になってしまう可能性もあります。

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では、どうしたらいいのでしょうか。

これまでに数多く行われてきた研究のデータをもとに、

  • どの様にして褒めるのがいいのか?
  • ご褒美は有効なのか?有効ならば、どう扱うのか?

を紹介します。意外だなぁ…と感じる部分も楽しんでいただけたら幸いです。

 

目次

ご褒美は有効か?慎重に考えないといけない理由

ご褒美については、「パズルが解けると$1貰える」「パズルが解けても何も貰えない」のグループを比較したデシ(E.L.Deci)実験が最も有名でしょう。

実験方法

パズルが好きな学生を対象とした実験です。

彼を次のグループに分けて、好きなパズルに挑戦してもらい、その後の休憩時間の様子をこっそりと観察するというものでした。

Aグループ 通常通りパズルを楽しむ。ご褒美・報酬はなし。
Bグループ パズルが完成すると報酬を支払うが、途中からは報酬を支払うことを辞める。

もし、パズルに対するモチベーションが強ければ、もともとパズル好きな人の集まりなので、休憩時間もパズルに取り組み続けるだろうと考えられますが、結果はどうだったのでしょう。

 

実験結果と実験結果から言えること

実験結果は、次の通り。

Aグループ 休憩時間でも、半数以上の学生がパズルに取り組んでいた。
Bグループ ご褒美・報酬がなくなってからは、休憩時間には、パズル以外のことをする学生が急増した。

Aグループの学生が、休み時間もパズルに取り組むのは、もともとパズル好きな学生が集められていたので、当然と言えば、当然の風景と言えるでしょう。

一方、Bグループの方は、ご褒美・報酬が貰える間は意欲でしたが、報酬が得られなくなると、モチベーションが下がってしまいました。

つまり、

ご褒美・報酬というのは、モチベーションを高めるのに即効性は高いが、持続性がなく、効力が失われると、通常時以下の状態に落ちてしまう。

ということが分かります。

このことから、私たち大人は、子どもに対してご褒美を与えることを考えるのであれば、慎重に検討する必要があることが分かります。

 

様々な褒め方を試した実験から見えること

では、どの様な褒め方・ご褒美の与え方がいいのでしょうか。

日本の小学生を対象とした実験の内容を簡単に紹介します。

様々な褒め方の効果を調べる実験から

簡単な漢字ゲームを学校で行い、「続きをやりたい人は家でやってきても良い」という実験が行われたことがあります。

これにより、子ども達のやる気・モチベーションの持続性が見えてきそうです。

この実験に参加した子ども達は、必ずしも漢字が好きとは限りません

実験方法

まず、子ども達を4つのグループに分類し、それぞれ家でやってきた量に応じて、定められた褒め方をして、4日間の変化を見るというものです。

Aグループ 感情なしの言葉をかける
Bグループ 賞状を渡す
Cグループ 感情を入れた言葉をかけて頭などをなでる
Dグループ 何もしない

Cグループが最も優位ではないか?と思った方も多いのではないでしょうか。

実験結果

実験結果は、Dグループの様子を基準にして、他のグループがどうだったのかが評価され、つぎの様な結果となりました。

実験結果を分かり易くするためにイメージ化したもの

つまり、何らかのご褒美(褒め言葉・賞状)は、子どものやる気に対して優位に働くこともあるが、やる気を削いでしまう可能性もあるということです。

また、言葉掛けについても同様で、心理的には、「先生に褒めて貰いたい・認められたい」という欲求から、一時的には頑張ろうとするが、その欲求が一旦満たされると、「まぁ、こんなものか」という認識になると考えられています。

言葉や賞状でさえ、プラスにもマイナスにも変化するのだから、金銭的なも(〇〇を買ってあげるなど)は、さらに振れ幅は大きくなることは十分想像できる。

これは、大人社会でも様々なところで見られる現象です。

 

大人の様子からもご褒美・報酬の怖さは分かる

典型的な例が「アフィリエイト」です。

副業をすることが一般化し、「ネットを使って稼いでみよう」と考える人が、かなり増えてきました。

アフィリエイトのメリットはたくさんあります。

  • 先行投資が少ないのでリスクが小さい。
  • 大きく稼げる可能性を秘めている。
  • 好きな時間に作業をすることができる。

副業としてチャレンジするには、もってこいの条件なのですが…

日本アフィリエイト協議会より引用

月収が1万円に満たない方が、約90%という状態です。

その一方で、月に100万円以上、稼ぎ続けている方もいらっしゃるのが現状です。

日本アフィリエイト協議会より引用

そんな業界の話ですが、5年以上継続的に取り組んでいる人は、全体35%程度にとどまっているのが現状です。

つまり、

大人でも報酬を期待し過ぎるとやる気は低下する

この様な構造になり、先ほど紹介したご褒美のルールが大人でも適応しているという見方もできるということです。

では、どうしたらいいのでしょう。

 

褒め方・ご褒美などを考える前に、大人が自身のために頑張る

子どもが目標に向かって頑張り続けるには、ご褒美などの外的要因よりも、自分で〇〇したいと思えるようになる内的要因が大切です。

ただ、内的要因は、心の内側のことなので、「〇〇すれば心が変わる」という単純なものではありません。

ただ、私がこれまでに教師として様々なご家族と関わったり、今回紹介した実験の結果などを踏まえると次のことは確かだと感じています。

  • ご褒美は、結果に対してではなく、過程に対して少しだけ
  • 大人と子どもの関係(共感しあうことが大切)
  • 大人自身が目標に向かって頑張る
  • 継続性が必要なことを暮らしに取り入れる

それぞれ簡単に解説します。

ご褒美は、結果に対してではなく、過程に対して少しだけ

よくあるご褒美のパターンは、

  • テストで90点以上なら〇〇を買ってあげる。
  • 通知表で5が3つ以上あれば〇〇を買ってあげる。

というものです。

もちろん、このご褒美を目標にして頑張る子もたくさんいますが、目標に向かって一生懸命努力したけれど、85点だった…となればどうでしょうか。

マナブくん
マナブくん

やっぱり、どうせ俺なんかダメなんだ。

努力したって無駄ってことが分かったわ。

ということを学んでしまうことも十分考えられます。

もちろん結果も大切ですが、結果を出す前段階の努力を続けることを大切にしたいので、ご褒美を考えるのであれば、努力している段階で、少しだけご褒美を出したいと思います。

【親向けの話】受験生なのに成績が下がった時にどうすればいいの?の記事では、私の家でどんなご褒美を出しているのか、紹介しています。参考にしてください。

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ものよりも大人と子どもの関係を重視(共感しあうことが大切)

次の2つの場面を比較してみましょう。

  • 大嫌いな嫌な社長が「もっと頑張れよ。営業成績が伸びたら5万円あげるぞ」と言われた
  • 尊敬する社長が「今は苦しいけれど、なんとか頑張ろう。私もこれから夜にかけて5件アポがとれたから行ってくる。何時に帰社できるか分からない状態だけど、一緒に頑張ろう」と言われた

目に見える分かりやすいメリットは、圧倒的に前者の方ですが、後者の場合の方が、「頑張ろう」と思えるのではないでしょうか。

つまり、「何を言うか」よりも「誰が言うか」という部分が重要なのです。

こうした良好な関係を親子間で築くには、一緒に遊ぶことが一番です。

私の場合は、息子と筋トレをするくらいくらいですが、30分ほど、お互いに楽しい苦しみを味わうのは、関係を築くのにとても良いと感じています。

また、個別に学習指導をお願いされることもありますが、

  • 教え子と必ず山登りに行く・自転車で遠出をするなど…
  • 教え子が解く問題は、基本的に自分も解く

ということをやっています。

つまり、「誰が教えるのか」という部分を大切にしているということです。

 

大人自身が目標に向かって頑張る

当然のことですが、大人が頑張る姿を子どもは良く見ています。

例えば、次の様なご家庭の子どもは、やる気を高めることが非常に困難です。

  • 家の人がゴロゴロと昼寝をし、夕方になるとテレビやスマホを見ながら家事をする。
  • テストの結果が悪ければ、怒り出す。

子どもからすれば、「何で自分だけ頑張らないといけないんだ」という思いになるのは当然のことです。

反対に多少不器用で、いろいろな事が上手く行かなくても、頑張る親を見てきた子どもは、ダラダラする時期があっても、いい状態に戻る可能性はかなり高くなります。

継続性が必要なことを暮らしに取り入れる

頑張ろうと一旦は思うものの、うちの子は「根気・根性がない」と言われるケースが、よくあります。

それは、何をするにしても「継続させる必要がない暮らしをしている」ということになります。

経験則ですが、暮らし方を変えることで、継続性はかなり向上すると言えます。

詳しくは、【具体例】根気がない子どもに育つ環境とシンプルな改善策の記事で解説しています。

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また、今回は「褒め方・ご褒美」について解説しましたが、「叱り方」については、子どもの叱り方・小中学生に最も有効な方法とは?【調査から明確】の記事で解説をしています。

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子どもは人であることを深く理解しておこう

そもそも、私たちの祖先は、なぜ厳しい農耕作業を頑張り続けることができたのでしょう。

当然、この様な作業をしなければ、命の危険にさらされるということもありますが、もう一つの理由が、

一緒に頑張る仲間がいたから

です。

お金や地位・権力が現代ほどしっかりと確立していなかった数千年もの間、人と人とが支えあって命を繋いできたということは、人には、支え、支えられることで頑張れる本能が備わっているということです。

もちろん、現代の子ども達にもその本能はしっかりと受け継がれており、子ども達になぜ過酷な部活動を頑張り続けることができるのか?と質問をすると…

好きなスポーツだから頑張れるっていうのもあるけれど、俺一人じゃ頑張れないわ。上手・下手いろいろな奴がいるけれど、みんなが頑張るから、頑張れるねん。

こうした言葉が返ってくることが多いです。

この言葉の意味を深く噛み締めることが、私たち大人にとって大切なことだと思います。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。

「一緒に頑張ろうや」と言って、大人が行動を起こすことが、誰にとっても最高のご褒美じゃないかなぁって思います。

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この記事を書いた人

公立小学校で15年勤務した後、退職。
現在は、アメリカ・香港・ペルー・インドネシアなどの小・中学生に日本の教育を届けている。日本の文化と住まい・暮らし方との関係を追求し、建材メーカーと共に日本の暮らしを研究している。
「なぜ、人は学ぶのか?」「学ばないといけないのか?」元教員の視点も交えつつ子育てに関する情報を発信している。

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