誰もが一度は聞いたことがある言葉のはずです。
大人の私たちも、叱られた時よりも、褒められた時の方がやる気が出るものです。
だからと言って、「褒めまくればいい」というものでもありません。
あるお母さん(仮名:田中さん)は、育児書を読んで「とにかく褒める」ことを徹底されてきたそうですが、子どもが中学生になった頃から困り始めました。
こんな田中さんの事例を挙げながら、
- 間違った子どもの褒め方とはどういうものか?
- タブレット学習に潜む、間違った褒め方
について解説します。
あなたの子育ての参考にしていただけると幸いです。
【事例】とにかく褒めまくって子どもを育てた結果
残念ながら、田中さんは中学生になった子どもを見て困り果てていました。
その理由は、
- 何かをお願いすると「面倒くさい」と言ってやらない。または、「〇〇を買ってくれるならやってあげる」と言う。
- 偶然、機嫌がよく、言われたことをしたとしても、「〇〇をしたからもう疲れた」と言いまくる。
- 自分の宿題さえも「宿題をやったら何を買ってくれる?」と言いだす。
こんな風になってしまい、学校での友達関係も上手くいかないことがかなり増えてきたということになってしまったのです。
きっと、この話を冷静に読まれた方は、何か寂しさの様なものを感じたのでは、ないでしょうか。
なぜ、この様な状態になってしまったのでしょうか。
田中さんの話を詳しく聴くと見えてきたことがあります。
田中さんの「褒める」は、間違った認識だった
田中さんは、
という理解をしてしまっていたのです。
例えば、
- テストでいい点数をとったら、ゲームソフトを買ってあげる。
- おつかいに行ってくれたら、アイスクリームを買ってあげる。
- おじいちゃんに優しくしたら、お小遣いをあげる。
経済的に恵まれた環境だった田中さんは、「よく頑張ったね」と言いながら、子どもにこうしたご褒美を与えていたのです。
最初は、子どもは大喜びをし、行動もどんどん良くなっていったために、何か良い行動があると、一言褒めながら、ご褒美を与えることが良いことだと思ったそうです。
実際に、小学生の頃は、周りの大人の方からも「田中さんってどうやって子育てしているの?とっても素直で、成績も優秀で、明るいし言うことないじゃない。」と言われることも多く、ご褒美をあげながら、一言褒めることは、間違いないことだと確信していたそうです。
子どもは周りの人の全ての行動から学ぶ
子どもは、周りの人の行動を私たち大人が思っている以上に良く見ています。
田中さんの子どもと直接話をしましたが、こんなことを思っていたことが分かりました。
- 自分が頑張ったり、良いことをしたらお母さんが喜んでくれる。
- でも、何も良いことをしなかったら、何もメリットがない。
つまり、根底には誰もがもっている素直な感情「誰かに喜んで欲しい」というものがあるにも関わらず…
ということを学んでしまったのです。
これは、私たちが仕事をしながら感じるストレスと似ています。
- これだけ営業成績を出したのだから、もっと給料を上げてくれ。
- これだけ会社に貢献しているのに、全然、地位が上がらないじゃないか。
誰もが仕事をしながら、一度はこんな感情を抱いたことがあるはずです。
それは、「働く」という事を通して、行動を何らかの価値(主にお金)に交換することを前提にしているため、自分の行動の価値と得られる価値を比較し、このバランスが悪いと思った時に、ストレスを感じるのです。
田中さんの子ども場合、残念ながら、「褒めること」が歪んだ形で表現され続けていたために、日常生活も仕事をしている様なものになってしまっていたのです。
自分の全ての行動が、何らかの価値に交換されるという理解では、子ども社会では上手くいかないことは明確です。
最近さぁ、私は4回も親切にしてあげたでしょ。
でも、私はまだ、2回しか親切にされてないよ。
あと、2回分頼むね。
分かりやすい様に、こんな表現をしましたが、田中さんの子どもと話をしていると、友達に対してこんな感情を抱いていることも分かりました。
ものには、十分満たされていますが、心に大きな穴が空いてしまっている印象を受けました。
また、「ご褒美付きの褒める」という行為には、だんだんエスカレートするという特徴があります。
大人の視点で言えば、時給1500円働き始めたころは、1500円も貰えることに感謝できていたけれども、日を重ねるごとに時給1500円では安いと感じるようになる感覚と似ています。
詳しくは、【小・中学生向】勉強が好きになる習慣を手に入れる3つの方法の記事の「ものやお金のご褒美は悪影響しか残らない」の部分で解説しています。
ご褒美について、様々なケースを見たり、子どもの心理を考えると、どうしてもきになるのが、タブレット学習のシステムです。
【要注意】気になるタブレット学習の仕組み
この様な話をすると、
と多くの方が言われますが、最近私が気になっているのは、タブレット学習のシステムです。
タブレット学習システムは、様々ありますから一概に言い切ることはできませんが、
になっているものが多いということです。
具体的には、
- 勉強時間が自動計算され、規定時間を超えるとゲームができる。
- 特典率が高くなると、タブレット上でグッズが貰える・ガチャができる。
こうしたシステムがあることによって、勉強嫌いだった子どもがタブレットに向かうというもので、一見すると素晴らしい道具にも見えてきます。
成績もどんどん上がる子どももたくさんいます。
特にゲームが好きな子どもにとっては、かなり速攻性も強いので魅力的です。
ただ、子どもが幼いほど、
ということを大人の私たちは考えないといけません。
もちろん、子どもによって何を学ぶのかは様々ですが、
- 勉強をしたら面白いゲームをすることができる。
- 間違えずにたくさん問題を解いたらグッズが手に入る。
ということを学んでしまうリスクもかなり高いということです。
これを私が「リスク」と呼ぶのは、本来、
だからです。
子どもが幼い間は、「勉強をすると楽しいゲームができる」という認識でも、大きな問題にはなりませんが、思春期くらいの年齢になると…
何で二次関数なんか勉強しないとアカンねん。
二次関数を知ったところで、仕事に役立つか?
1円にもならないやろ。
こうした思考になりがちです。
この様なことを考えることは素晴らしいことですが、こんな気持ちのまま勉強をしても全く楽しくありません。
実際に、田中さんの子どもは、こうした考え方が根強く残り、全ての勉強が嫌いになってしまい、進学に対しても学校から厳しい言葉を貰うはめになってしまったのです。
勉強をする価値は、山のようにたくさんありますが、その一つは、【勉強をする理由】答えが出せないという経験を存分に積むための記事で紹介しています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
無償の愛・条件なしの愛が子どもにとって大切と言われますが、勉強に対しても「条件なし」で付き合うことで、本当の価値が見えてくると思うのです。
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