小中学校でも、随分タブレット学習が浸透してきました。
これには賛否様々な意見があると思いますが、どれだけタブレット学習が浸透しても、
と私は、子ども達・保護者に声を掛けています。その理由は単純で、
です。なぜ、この様なことが言えるのか、最近研究結果や私自身が小学校で授業を行いながら実験をした結果を交えながら詳しく解説します。
大人だってほとんど手書きしてないじゃん。
タイピングが上手になった方が絶対意味があるって。
今どき、手書きなんて面倒くさいわ。
なぜ、日本でタブレット学習が推進されたのか?
なぜ、タブレットやノートPCが子ども達の学習の場に使われるようになったのでしょう。
文部科学省の「GIGAスクール構想の実現」という資料では、次のことを目指すと書かれています。
- 学びにおける時間・距離などの制約を取り払う
- 個別に最適で効果的な学びや支援
- プロジェクト型学習を通じて創造性を育む
- 校務の効率化
- 学びの知見の共有や生成
要するに、
- いつでも・どこでも・自分にあった学習ができるようにする。
- 指導者側の仕事を効率よくする。
ということです。
これは決して悪いことだとは思いませんが、様々な学校の状況を見ても、大きな誤解が生まれていると感じます。
というのは大きな誤解です。
現場の先生方の話を聞くと、タブレット学習やノートPCを使った授業をすると、参観日受けするとか、研究授業での評価が良くなるなどと言われていました。
が、それは、見栄えだけの問題で、重要なことは
ということです。
これからはコンピュータの時代でしょ。
だから授業でコンピュータを使った方がいいんじゃないの?
こう感じる方が多いかもしれませんが、ここで、人はどんな風に思考をするのか、考えてみましょう。
「学力の高い子=よく考える子ども」がする事は意外と非効率!
小中学校で授業を見るとと次のような風景によく出会います。ここでは、小学校で学習する「台形の面積」を例として挙げます。
今日は、台形の面積をどうやって求めるか考えてみよう。
そんなの知っています。
台形の面積=(上底+下底)×高さ÷2をしたら求まるで。
へぇ、本当にそうなの?
なんで、そんな式になるの?
なんでかは、分かりません。
でも、塾の先生がこの式を覚えておいたらテストで点数が採れるって言ってたから、それでいいんじゃない?どうせ、なんでそんな公式になったのか、テストに出さないでしょ。
確かに、ここで「その通りだね。公式にバンバン数字をあてはめて、台形の面積を求めてみよう」と言えば、子ども達はどんどん台形の面積を求めるでしょう。
つまり、
- 決められたルール通りに情報を処理する力はつく。
- なぜ、この様な式になるのか考える力はつかない。
ということになることは明白ですが、あなたは、自分の子どもにどちらの力をつけてほしいと願いますか。私は、断然、「なぜ?」を考える力をつけて欲しいと願っています。
子どもはできることなら「考えたくない」と思っている。
この事例で、重要なことが分かります。
と彼女は判断したということです。
そして、厄介なのは、台形の公式さえ覚えておけば、小学校の算数のテストくらいならなんとでもなるということです。
実際に、テストをなんとかしのげた子どもは、
ということをきちっと学ぶのです。
では、台形の面積の公式が、なぜ、(上底+下底)×高さ÷2となっているのか、解説をしたり、考えてみるとどうなのか? 実験をしてみたことがあります。
子ども達はどの様な状況になった時に最も深く考えるのか?【実験の結果】
たまたま、小学校5年生1組・2組の両方の算数の授業をする機会に恵まれた時に、次の様なことをしてみました。
1組 | 2組 |
台形の面積の公式が、(上底+下底)×高さ÷2で表されることをプレゼンテーションソフトを使って、丁寧に説明する。 | 同じ大きさに切った台形の紙を一人2枚ずつ配布。その2枚の台形は、自由に切ったり、折ったりしても良いことにして、台形の面積の求め方を考える。3分間は一人で考え、その後は、グループの友達と相談しても良い。 |
もちろん、授業効率は、圧倒的に1組の方が良いです。
ところが、授業が盛り上がったのは、2組で、単元末のテストも2組の方が良かったという結果に終わりました。
この結果から、次のような事が言えるでしょう。
子ども達は、手先・感触・脳・言語などを使って思考する
1組の子ども達へ行ったアプローチは、脳が理解できるようにしたことです。
一方、2組の子ども達は、台形を折ったり、切ったりしながら指先を使い、友達と相談したりしながら、(上底+下底)×高さ÷2になる理由を明確にしました。
当然、作業・相談をしている時の教室はかなり賑やかです。
あちこちから、「分からない」「おぉー」「できた!」などの声が飛び交います。
全く、近代的ではない授業ですが、子ども達は、自分の
- 手先
- 触覚
- 言語
- 脳
を使って考えてのです。決して、効率の良い授業とは言えませんが、非常によく考え、授業をしている私も楽しく感じられました。
ここで整理しておきたいことは、当たり前ですが、
ということです。
では、ここで「手書き」と「タイピング」の違いを改めてみていきましょう。
「手書き」をすれば言葉がより深く認識できる
海外の子ども達が、日本語を学ぶ時に、最も苦労するのが漢字です。
漢字は手書きをすることで多くのことに気づくという事例
先日は、海外の子ども達と
という話をしました。
私たちからすれば、何でもないことかも知れませんが、普段、漢字に触れる機会が少ない海外の子ども達にとっては、非常にややこしい話です。
ここでも、簡単な実験をしてみました。
- 大きく書いた二種類の漢字を見て答えを予想する。
- 一度、ノートに二種類の漢字を書き写してから答えを予想する。
結果は、すでにお分かりの通り、書き写してからの方が圧倒的に正答率が高くなりました。
「暖かい」には日があるから、太陽っぽいけど、「温かい」は「氵」があるから水っぽい感じがするわ。
ノルウェーの研究でも「手書き」によって学習効果は高まると発表された
ノルウェー科学技術大学の「手書き」と「タイピング」を比較した研究は有名です。
- スクリーンに映しだされた文字を、手書きしている時
- スクリーンに映し出された文字を、タイピングしている時
この二つで脳の活動の様子を比較するというものです。
結果は、「手書きをしている時」の方が、脳が活発に活動していたということです。
手書きで文字を書いている時、私たちは、
- 文字の読み方・意味
- 鉛筆やペンを紙にあてる力の調整
- 文字を書いている時に出る音
- 手が疲れてきたなぁ
- 特に漢字の場合、複雑な書き順など…
様々なことを感じながら書いているのです。
この様々なことを感じるということは、記憶を高めるためにも非常な重要なことで、その理由は、子どもの記憶力を高める方法【基本的な考えは超シンプル】で、詳しく解説しています。
一方、タイピングはとても便利ですが、残念ながらこれほど多くのことを感じることはできません。
https://nice-service.work/careless-mistake/
まとめ 学力と身体を使うということ
私は、中学生の時に足を骨折してしまい、1ヶ月ほど松葉杖を使った生活を送りました。
無事に、ギプスが外れ、「歩いていいよ」と言われた時に、歩き方が分からない自分にショックを受けたことがあります。
もちろん、歩き方なんて、右足を出して、左足を出せばいいということは頭では分かっていますが、なかなかしっくりこなかったのです。
この時、頭(脳)で分かることも大切ですが、身体も知っているということの大切さを痛感しました。
タブレット・ノートPCなどで学習をすると、様々な動画を見ることもでき、理科の実験結果も簡単に「知る」ことができますが、「身体は知らない」ということです。
やっぱり、いろいろな場面でできるだけ身体を使うって大切なのです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
高校生になって、初めて物理の教科書を見た時に感動したのは、それまでに散々、自転車で走りまわり、川や山で遊びまくった日々があったからじゃないかなぁと思います。
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