「記憶力を高めたい」と思う人は、私だけではないでしょう。
先日も、ある保護者の方から、
という質問を受けました。
私自身、小学校で子ども達の食べ物を調査して、学力との関係を分析することを行なったことがあるので、その経験を踏まえながら解説します。
食べ物と記憶力との関係は、非常に難しいために、丁寧に読んでいただき、参考にしていただけたら幸いです。
結 論
- 記憶力が高まると言われる食べ物を食べたからと言って、爆発的に記憶力は高まらない。
- 子どもの為に、食べ物に配慮するという考え方は重要。
- 日本人は、日本らしい食事をとることが大切(進化の歴史を踏まえて)
1と2が矛盾する様に見えますが、どういうことかもあわせて解説します。
最後まで頑張れない・なかなか覚えられない子どもの朝食の事例
まず、食べ物は子どもの成長にとって重要と言われますが、学力と関係があるのか?というところに興味がある方も多いでしょう。
そこで、小学校の保健室に訪れた子ども達の朝食の記録を毎日見ることにしました。
怪我で保健室を利用した場合と、月に4回未満の保健室の利用者を除外して、該当者の朝食を見るとある一定の傾向が見られました。
- 朝食は食べていない
- ケーキ・パンケーキ
- 菓子パン(チョコパン・クリームパン・ドーナツなど)
- コーンフレーク
- インスタントラーメン・インスタント焼きそば
すでに予想できるかと思いますが、ここに該当した子ども達は、低学力・低体力・無気力の傾向が強いかったのです。
じゃあ、やっぱり記憶力や学力なんかと食事は関係あるんじゃない?
せっかく頑張っても、結果につながらないのなら、無気力になる気持ちも分かる気がするわ。
はなちゃんの様な考え方も良く分かるので、経験豊富な養護教諭(保健室の先生)とこの結果について何度も話しあった結果、次の様なことが言えそうだと、まとまりました。
- ご飯・お味噌汁・お漬物といった朝食を食べている子は一人もいなかった。
- 簡単に食べられるものが多いが、こうした朝食を子どもに食べさせる親の意識・感覚が子どもにも影響している可能性もある(食事以外の暮らし方も異なる)。
- 急激な血糖値の上昇と下降が落ち着き・集中力に影響を及ぼし、記憶力や学力に影響を及ぼしている可能性も考えられる。
公立小学校という場での小さな調査なので、様々な条件を揃えて実験するということはできませんが、他の学校の先生方にも伺っても、こうした可能性は十分考えられるということでした。
では、反対に一般的に、記憶力が高まる食品と言われるものを多く摂取するとどうなるのでしょうか。
一般的に記憶力が高まると言われる食品を多く摂取した事例
一般的に脳に良い食事というと「記憶力が高まる食事」「脳が活性化する食事」などと言われることが多いですが、これらを通常より多く摂取すると、記憶力が高まるのでしょうか。
記憶力が高まる食事・脳が活性化する食事
例を挙げればキリがないほどありますので、よく言われるものをピックアップします。
- 青魚(いわし・さば・さんまなど)
- バナナ・チョコレート
それぞれ、もう少し詳しく見ていきましょう。
青魚に含まれるEPA・DHAの脳への働き
「EPA・DHA配合」などと書かれた商品も多く出回り、青魚に含まれるEPA・DHAは脳にとって、良いものだという認識が広まりました。
有名な論文は、「黒酢、DHA摂取と記憶力」というものでしょう。
極めて簡単に言えば、
というものです。
また、オックスフォード大学の研究で、子ども達のDHA血中濃度の低さと読解力・記憶力低下は関連するということが発表された影響も大きいと思います。
この研究で興味深いところは、
- 血中DHA濃度が低いと記憶力・読解力が低い傾向にある。
- 血中DHA濃度が低いと反抗行動・情緒不安定な行動が増える傾向にある。
ということです。
つまり、食事はとても大切だという事は確かに言えそうですが、だからと言って、記憶力がグンっと高まる訳ではないという点は知っておきたいものです。
改めて、様々な論文に目を通してみましたが、EPA・DHAの摂取によって、年齢や疲労と共に低下する程度を和らげるという意図のものが多くありました。
という理解が今の所適切だということです。
青魚を食べまくったら何でも覚えられるようになる訳じゃないのね。
まぁ、そんな魔法の様なことってないよね。
バナナ・チョコレートの脳の働き
「バナナやチョコレートが脳に良い」という話もよく聞きます。
私たち人間の脳は膨大なエネルギーを消費するため、そのエネルギー源となる「糖」がバナナやチョコレートには多く含まれているから、脳にとって良いだろうという考えかになります。
これについては、高校生が実際に実験・調査をしてくれている「チョコレートと学習」というものがとてもわかりやすいです。
結論は、
ただ、ここで注意しておきたいことは、先に触れた「保健室に良く行っている子ども」は、朝からしっかりと甘いものを食べているというところです。
こうしたことを踏まえると、記憶力を高めるために、食事も工夫することは大切ですが、やはり「適度に」という部分が大切です。
また、意外かもしれませんが、
うちの子は食べ物も意識して、青魚いっぱい食べさせているの。
それに、チョコレートも常備して、毎朝バナナを食べさせているのに、成績が上がらないの。なぜなの?
と言われる方もいらっしゃいます。
しつこい様ですが、青魚・チョコレート・バナナは、魔法の食品ではありません。
健康的な身体があるからこそ、サッカーの練習に通い、サッカーが上手になるのと同じ様に、健康的な脳を食品が支えてくれているのだからこそ、努力をより一層しようと考えたいものです。
ただ、私が気になるのは、朝ごはんに「糖」をしっかりとっている子が、なんで保健室に行ってるの?矛盾するじゃない。
本当は脳・身体に良い食事というのは、地域によって大きく変わる
最近は、情報もグローバル化されてきましたから、
- アメリカの研究では〇〇という事が明らかになった。
- 最近、ドイツでは、〇〇ということが研究で分かってきた。
となれば、一気に認知が高まるということがあります。
ただ、身体や脳に対して言えば、
という視点をもっておきたいということです。
つまり、欧米人の身体と日本人の身体は、同じ人間でも大きく異なる点があるということです。
分かりやすい例として「水」を挙げます。
あなたも次の様な話を何度か聴いたことがあるはずです。
たかが水と言えば、水に対して失礼ですが、水の質が少し違うだけでも私たちの身体は大きく反応してしまいます。
つまり、私たち日本人は、古くから日本にあるものを食べて代々命をつないできたのですから、古くから食べられてきたものが身体に合うと考えるのが最も自然で簡単でしょう。
日々、海外の子ども達とオンラインで話をしていますが、日本にゆかりのある子ども達は、アメリカに住んでいながらも、やっぱり「ご飯・お漬物が美味しい。」と言います。
こうした生物的なことも踏まえると、
- バナナはフィリピンの人にとってはとても有意義である。
- お魚・お米・野菜は日本人とって大切な食べ物である。
- バジル・ルッコラ・セロリ…などの外来種の野菜よりは、大根・人参・茄子…などの様に古くからある野菜を食べた方が私たちの身体にはあっている。
近年は、「〇〇成分が脳に良い」と分析的な見方がされることが多いですが、私たちの脳も歴史的には、日々の生活を送りながら、必要に応じて進化してきました。
この流れに逆らわず、生活全体を見る目をもちたいと思います。
脳の特徴を活かしてしっかりと記憶力を高めたいというあなたは、子どもの記憶力を高める方法【基本的な考えは超シンプル】の記事をお読みください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
バジル・セロリ・ルッコラも本当はめちゃくちゃ大好きですから、時々食べてますけどね。
コメント