子どもの叱り方・小中学生に最も有効な方法とは?【調査から明確】

最近は、「子どもを叱る」という行為を難しく感じている方も多いでしょう。

その理由は、

  • 厳しく叱り過ぎると虐待だと言われる可能性がある。
  • かと言って、優しい言葉で注意をしても効果が感じられない。
  • 罰を与える様な叱り方は良くない気がする。など…

いろいろ考えることがあるはずです。

私も学校現場で、子どもを叱るということは何度も行ってきましたが、「叱りすぎ」「生ぬるい」など、様々なことを保護者に言われ、悩んだものです。

そこで、ここでは、私の経験と197人の小学5・6年生を対象に行われた調査結果をもとに、

思春期の子ども達を叱る最も効果的な方法

を紹介します。

通常、叱るという行為は、大きなエネルギーを使いますが、今回の話を参考にして、いただけたら幸いです。

 

目次

【実例】こんな叱り方は、全く効果ないどころか逆効果!

中学3年生の娘をもつ木村さん(仮称)は、娘の数学の成績が悪く、酷く悩んでおられました。

そこで、

  • 娘をA塾に入塾させた。
  • それでも、結果が伸びず、B塾にも入塾(A・B通うことになった)。
  • 家でも学校からの配信を見ながら、親が学習のフォローを行なった。

ところが残念なことに、娘の数学の成績は下がってしまったのです。

木村さんのこれまでの力の入れようが強かったのか、成績が上がらないことに、怒りを感じたそうです。

そして、怒りの感情は高まり、次の様なことを言ってしまったそうです。

何で、あんたは、こんなに塾に行かせてやっているのに成績が上がらないの!今回もまた、テストの点数が悲惨じゃないの!何をしてもダメなんじゃない💢

気持ちはよくよく分かりますが、問題点は、

何をしてもダメなんじゃない

という部分です。これは、「人格の否定」になってしまいます。

人は誰でも、得意なこと・不得意なことがあり、何をしても全てがダメという人は存在しません

叱られた中学3年生の娘は、もともと読書が大好きだったにも関わらず、読書からも離れてしまい、数学以外の教科も「私には向いていない」と考える様になってしまいました。

さらに、体重もかなり落ちてしまうということになってしまいました。

金田ママ
金田ママ

じゃあ、子どもを叱ってはダメなの?

叱ることがいけないのならどうしたらいいの?

ということになりそうですが、「子どもは叱らないといけないことも多いもの」です。

ただ、どの様な叱り方が最も効果的なのかを私たち大人が知っておきたいものです。

 

思春期の子ども達にとってどんな叱り方が効果的か?【調査結果から】

誰でも、時には感情的になってしまい声を荒げてしまうことがあるものです。

これは自然の流れに沿ったことなので、何らかの効果がある様に感じられるかもしれませんが、実際はどうなのでしょう。

小学校5・6年生の子ども達197人を対象とした調査の結果を見ていきましょう。

 

叱り方よりも大切なこと

「親の叱り言葉の表現と子どもの受容過程に関する研究」で行われた調査の結果を見ていきましょう。

「親の叱り言葉の表現と子どもの受容過程に関する研究」データよりグラフを作成

まず、何よりも重要なことは、

叱り方以上に親子関係が大切

ということです。上のグラフを見て分かる通り、親子関係が悪い場合は、どんな叱り方をしても、反発の気持ちが強くなることが確認できます

ここで言う「親子関係が悪い」というのは、「親が自分のことを不満に思っている」と感じている状態です。相手が自分のことを不満に思っている状態で叱られると、反発心の様なものが芽生えることは、私たち大人でもあります。

例えば、「社長は私のことを嫌っているだろうなぁ」と感じている状態で、社長に叱られると、腹が立ったり、社長の言っていることは間違っているという気持ちになるのと似ています。

反対に、あなたが尊敬する人・好意をもってくれていると感じる人の言動は、肯定的に捉えることが多いのではないでしょうか。

この前提条件を踏まえて、最も効果的な叱り方は何だったのか見ていきましょう。

 

最も効果的な叱り方とは?

「親の叱り言葉の表現と子どもの受容過程に関する研究」データよりグラフを作成

先ほどのグラフをもう少し丁寧に見ると、次のことが分かります。

  • 親子関係が悪い場合は、なぜ叱ることになったのか「理由を説明すること」が最も反発の気持ちが弱い。
  • 親子関係が良好な場合は、「あぁそんなことをしたのか。残念」「悲しいわ」などと自分の感情をストレートに表現すると反発心が弱くなる。

ということです。

注意すべき点は、親子関係が悪い状態で、親が感情をストレートに表現したところで、反発心は大して抑えられないということです。

金田ママ
金田ママ

また、宿題をさぼったのね。

宿題をする大切さは何度も言ってきたのに…。

ママは悲しいわ。

マナブくん
マナブくん

宿題をする、しないは俺が決めることや。

ママだって、「勉強・宿題をしなさい」っていうくせに、自分はテレビばかり見てゴロゴロしてるじゃないか💢

こうなってしまうということです。

育児に関する書籍を見ていても「親の気持ちをストレートに表現する方法」は効果的と書かれていますが、親子関係がある程度良い状態で、初めて効果を発揮するということです。

ということは、

親子関係が良好な状態で、親の気持ちをストレートに表現する

ことが最も効果的であるということです。

ここで注意したいのは、

  • 親の気持ちをストレートに伝えること
  • 感情的に怒りを表現すること

この2つは全く異なるという点です。ついつい感情的になってしまうという方は、【人はなぜ怒るのか】怒りの感情が湧く理由と怒りを鎮める方法の記事を参考にしてください。

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【補足】叱り方に関する調査で行われた叱り方

この様な話を保護者が集まる様な場ですると、他の叱り方についてどうかという質問を受けることがあります。

ここでは、先に紹介したグラフの他の項目について補足しておきます。

人格評価 「あなたはダメな子ね」など、人格を決めつける様な言葉を交えて叱る。
突き放し 「勝手にしなさい」「もう何も言わないから」など、関係性を断つ様な言葉をかける。
望ましい行動の指定 「〇〇しなさい」「〇〇しないとダメ」といった行動を強制する様な言葉をかける。
問いただし 「なぜ〇〇をしたのか言いなさい」という様な言葉を使いながら叱る。

感覚的にも、これらの叱り方では伝わりにくいということが分かると思います。

けれども、こうした叱り方は良くない・効果が期待できないということを知っておかないと、誰もがついついやってしまう叱り方です。

特に突き放しは、ダブルバインドと言われる矛盾を生み、子どもが混乱する元となるために注意が必要です。

ダブルバインドについて詳しくは、子育てでついやってしまうダブルバインドって?【必ずやめられる】で紹介しています。

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また、ここでは叱り方をテーマにしましたが、褒め方については、【ベストな褒め方】ご褒美は有効か?実験データをもとに解説の記事で紹介しています。

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学校や塾・オンライン教材のあり方を考えてみる

最近、子ども達は、学校・塾・オンライン教材など様々なスタイルで学習をしています。

親としても、しっかり勉強して欲しいと願う方がほとんどで、そのニーズに応えようと学校も塾も様々な工夫を凝らしていますが、気になる点は、

教え方・コンテンツの充実には注力されているが、人間関係の構築には注力されていない

という点です。

今回、叱り方をメインに解説してきましたが、叱り方を追求する以前に、親子関係が最も大切であるのと同じ様に、学校や塾も先生と生徒との人間関係がとても重要になります。

学校では、人間関係の構築に力を入れていらっしゃる先生を見かけることがありますが、学習塾では人間関係の構築に力を入れている塾は、滅多に見かけることがありません

ところが、この前提条件を整えることで、子ども達は大きく変化します。

事例を一つ紹介します。

ある小学校の田中先生(仮名)の授業は、決して上手とは言えない状態で、発問も説明も無茶苦茶です。

  • これをパーっとやったらこうなるやろ。分かるやろ。
  • これは、この後どうなったと思う?

とにかく、指示語や擬音が多く、言葉だけを拾っていくと「よくこれで子ども達は理解できているよなぁ」という印象を受けます。

研究授業の際でもこの調子ですから、授業後に叩かれることも多いのですが…

  • 子どもはとても楽しそうに授業を受けている。
  • 学力テストの結果も驚くほど伸びた。

こうなった理由は、子どもが先生のことが大好きで、ほとんどの子どもが先生から大切にされていると感じていたためで、

子ども達は、田中先生の発問や説明を聞こうとしていたのではなく、田中先生の意図を汲もうと懸命だった

のです。

これが、人と人との関係の面白くもあり、複雑なところだと思います。

ついつい私たちは、「〇〇できる方法」などを求めてしまいがちですが、その前提部分を見つめる大切さを田中先生のクラスの子ども達は教えてくれたのです。

この発想は、社員教育や塾の経営にもかなり活かせる点が多くあり、今関わっている会社にも活用しています。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。

研究授業を失敗せずに楽しく乗り越える方法【元研究主任の解説】で授業の技術向上について解説していますが、いい授業って、「技術+人間関係」の上に成り立つものだと思います。

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この記事を書いた人

公立小学校で15年勤務した後、退職。
現在は、アメリカ・香港・ペルー・インドネシアなどの小・中学生に日本の教育を届けている。日本の文化と住まい・暮らし方との関係を追求し、建材メーカーと共に日本の暮らしを研究している。
「なぜ、人は学ぶのか?」「学ばないといけないのか?」元教員の視点も交えつつ子育てに関する情報を発信している。

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