日本では、小学5年生になると「割合(わりあい)」を学習します。
子ども達は、日常的に20%offとか、3割引などと書かれたチラシを見ていますから、とても馴染み深いものの学習になるはずですが…
実際は、
- 割合の勉強って難しい。
- とりあえず、公式を覚えておいたらなんとかなるだろう。
という風に感じる子が多いのが現状です。
また、小学校教師の間でも、「割合の単元」をどう乗り越えるかが大きな課題だと良く言われます。
なぜ、馴染み深いものの学習が、難しくなってしまうのでしょう。
数えきれない程、小学校の先生方が書かれた指導案をチェックし、私自身も何度も授業を行ってきた経験を踏まえて、「割合の学習」の問題点を整理したいと思います。
あわせて、どの様にすれば、子ども達が楽しく割合を学習できるのかも紹介します。
結 論
どういうことか詳しく解説します。
前提「子どもは分かったふりをする」名人であることを認識しよう
大人が学習を教える時には、
と考えるものだと思っておきたいものです。
これは、子どもが悪いという訳ではなく、「勉強の面白さをまだ知らない段階」であるために、よく分からないつまらないものに、何時間も費やすなんて無駄だと思うためです。
私は、「集まれ動物の森」がとにかくしたいの。
だから、勉強なんかとっとと終わらせたいの。
こういう時に、「なんでそうなるの?」なんて質問なんかすると大変なことになります。
それは、昔のヨーロッパの人がどうしたらこの問題が解決できるか…なんて考えて、いろんな方法を試したんだ。それもで、うまく行かないことがあって…
こんな話を聞かされる羽目になっては大問題です。
だから、なんとかして正しい答えを出して、「分かったよ」ということにしたいものです。
そんな子どもにとって、公式をすぐに教えてくれる先生は、救世主な訳です。
俺の行ってる塾は、もう三角形の面積の勉強をしているねん。
「底辺×高さ÷2」をしたら、面積が求まるから、めっちゃ簡単やで。
なんで、こんな式になるかは知らんけど、覚えておいたらいいらしいわ。
なぜ、割合の公式「く・も・わ」の公式で子どもは困ってしまうのか?
とにかく子どもは、今の課題を1秒でも早く終わらせたいと考えています。
そんな中で、割合の学習が始まり、
- 割合=比べられる量÷もとにする量
- 比べられる量=もとにする量×割合
- もとにする量=比べられる量÷割合
こんな公式を見たり、覚え方を教わったりすると、これで一安心するわけです。
ところが、実際に子ども達が解く問題は次の様なものです。
そのうち、シュートが入った回数は、132回でした。
シュートが入った回数は、シュートを打った回数の何倍ですか。
割合をもとめましょう。
どれが比べる量で、もとにする量なのかよく分からないという子がたくさん出てきます。
ところが、教える側の人は、私も経験がありますが、と分かって当然かの様に教えて、公式に当てはめると割合を求めるという流れにしてしまいがちです。
132回が比べる量だから165回がもとになる量と分かるやろ。
また、この問題を出した数日後に、
それまでに、ひろしくんはシュートを165回打っています。
シュートが入った回数は、シュートを打った回数の何倍ですか。
割合をもとめましょう。
この問題を出すと、回答はバラバラになってしまいます。
132÷165でしょ。
165÷132じゃないの?
たくさん練習問題をした子は、感覚的に比べる量やもとにする量がだんだんと分かる様になりますが、それでは、発展的な問題になると途端に苦しい展開となってしまいます。
そもそも、これでは子ども達は何を求めているのか良く分からない状態なので、算数・数学=ただの面倒な勉強になってしまいます。
具体的に割合の問題をどの様に指導したのか…詳しくは、【小学校算数】割合を「くもわ」を使わず完璧に理解する方法を参照してください。
そもそも公式の捉え方を変える必要がある【公式は覚えてはいけない】
割合の学習に限ったことではありませんが、
であって、いくらテストで良い点数をとることができても、数学的な考え方を理解し、本質を捉えたとは決して言えません。
これまでに、有名塾に通い、膨大な課題をこなして来た子ども達とも関わってきましたが、処理ばかり懸命に行ってきた子どもは、残念ながら高校物理で相当苦戦することになります。
彼らのフォローもこれまでにたくさん行ってきましたが、本当に大変です。
優秀な高校生のはずなのに、小学校の学習にまでさかのぼらないといけないことも多々ありました。
ですから、
という意識を周りの大人がもつことがとても大切です。
決して、最初から与えるものではなく、いくつかの問題を解く中で、共通点を整理していくと、一つの形になったということを存分に経験することが大切です。
そして、自分たちの作った公式と先人がまとめた公式が一緒だということに後で気付き、それから公式をどんどん活用すればいいのです。
この順で学習してきた子ども達のほとんどは、「公式を覚えないといけない」なんて言いません。
高校物理の教科書には、これでもか!という程、公式が掲載されていますが、それでも「物理ってそんなに覚えることないから楽やわ。」と言います。
私が実績だけにこだわる有名塾や私立学校の教育に問題があると感じるのは、この学びの最も楽しい部分、「創造する部分」があまりにも雑に扱われているためです。
ライオンの雄は、他の動物が怖がるように長いタテガミを生やしているのです。覚えておきましょう。
なんて言われても面白くもなんともありません。
何であんなヘンテコな毛を生やしているのだろう?何か意味があるのかなぁ?と考えたり、友達と意見を交換したりして、初めて楽しいと感じるのではないでしょうか。
長々と最後までお読みいただきありがとうございます。
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