子どもの進路を決めるのは難しいものです。
- 本人の希望
- 親の願い
- 将来展望
- お金の問題 など…
たくさん考えないといけないことがありますが、親としては、
というのが、一番の願いでしょう。
ただ、公立学校の教員の立場を離れ、公立学校・私立学校また帰国子女の方々と話をする機会が増えてくると、これまで違った風景が見えてきました。
そこで、私立中学校を受験するのであれば、理解しておきたいメリットとデメリットを紹介します。
この記事を書くにあたって、実際に私立中学校で教員として働いている知人にも本音を聞かせてもらいましたので、そういった事も踏まえて紹介します。
月並みな教育制度・システム的な話はここではせずに、もう少し深い話をしていきます。
結 論
- 楽に高校・大学へと進学したいのであれば、私立中学の受験を検討する余地あり。
- 設備は私立中学校の方が充実していることの方が多い。
- キメ細やかな指導が期待できるのは、公立中学校。
- 自分らしく生きるということは、茨の道(いばらの道)であるということ。
私立中学受験の最大のメリットは、高校・大学へのエスカレータ
私立中学受験のメリットは、
という点ですが、本当にメリットといえるのかは吟味が必要です。
少子化の影響もあり、内部生は高校・大学へと進学しやすい
現在(2022年)は、私立大学も少子化の影響を受け、私立学校の経営は以前より厳しくなりつつあります。
その影響もあり、内部生であれば、とにかく高校・大学へと進学することが容易となりました。
とは言っても、誰でも進学させるという風潮を作ると学校の評判にも影響が出るので、
少なくとも評定の平均は5段階で3を維持しておきなさい。
3を切ってしまったら、進学は厳しくなるかもしれません。
と日頃から子ども達に伝えているケースが多いのが現状です。
ここで、一つ疑問が湧いたので、2つの有名私立中学校の先生にこんな質問をしました。
評定の平均を3をクリアした場合でも、内部生を高校に上げると、外部から受験して入ってくる子ども達との学力差が大きく出るのでは?
外部からの受験をして入って来る子はレベルが高いのは事実。
だから、学校全体のレベルも高くなるから、本当にありがたい存在なんだ。
高校はクラス編成を工夫しているから学力差があっても大丈夫なんだ。
と、いうことでした。
つまり、
ということです。
もちろん、受験戦争なんかに巻き込まれずに、学生時代をのびのびと過ごさせてやりたいというお考えの方にとっては、大きなメリットと言えますが、私は、この体制には、大きな問題があるという考えです。
最近の若手社会人の方々の中には、「働きやすく、給料が良い環境」を敢えて捨てるという方が増えてきています。何をメリットとして捉えるのかが、ポイント。
詳しくは、私立中学を受験する最大のメリットが怖い【賢い子は厳しさを求める】をご覧ください。
実際に出会った有名私立中学の内部生は?
私が直接出会った数十人の有名私立中学の生徒は、一言で言えば、
というのが正直な感想です。
もちろん、彼らも中学受験の際には、猛勉強したそうですが、合格してしまえば、とりあえず授業に出席し、提出物などを出せば、それなりの成績が採れると言っていました。
彼らに、一般的な公立中学校の3年生の子ども達の様子を伝えると、
マジか…。そんな大変なこと絶対にできないわ。
早い内に受験しておいて良かったわ。
と言っていたのです。
彼らがこの様に感じる気持ちも十分に分かりますから、彼らを責めるつもりはありません。
もし、私たち大人だって、毎月どこからか50万円が振り込まれるのであれば、必死の努力をせいずに、のんびり過ごそうと思うのと同じだと思うからです。
この様な状態をメリットと考えるか、デメリットと考えるかは、あなた次第です。
学校設備は私立中学校の方が充実していることが多い
私立中学校を受験されるご家族の声を聞くと、意外と、
という声が多いものです。
では、公立・私立学校の設備はどの様な仕組みで充実していくのか簡単に紹介します。
公立中学校の設備
公立中学校の資金源は、もちろん「税金」です。
簡単に言えば、それぞれの地域の教育委員会が学校に対して予算を振り分けます。
この予算は、地域事情・生徒の人数などによって決定されますから、
中学校 | 年間予算 |
〇〇中学校 | 1400万円 |
△△中学校 | 1000万円 |
という様な形になり、この予算内で、学校は、光熱費・印刷代…などを捻出していかなくてはいけません。
税収がなかなか厳しい状態ですから、経費を如何に削減するかが学校の課題であるために、なかなか画期的な設備を導入することは難しいのが現状です。
ただ、学校は研究機関という役割を担うこともあるので、例えば「タブレットを効率よく学習に活かす研究をします!」と言って、文部科学省に認められると研究費が降りてきます。
ですから、研究の一環として新しい設備を導入することが可能な場合もありますが、最新設備を利用した教育を実現させるのは難しいのが現状です。
私立中学校の設備
私立中学校が新しい設備を導入するにしても、どこからかお金を引っ張ってくる必要があります。
もちろん、設備費も考慮して学費や諸費用が定められていますが、寄付を求められることが多いのも現状です。
当然、寄付なので必ず支払わないといけないものではありませんが、学校によっては、寄付をするのが当然という様な雰囲気の学校もあります。
また、私立中学校の場合は、「経済的にゆとりのある家庭の子が生徒」という前提があるために、全員が指定のノートパソコンを購入する様に言われるケースも多いです。
ちなみに、公立中学校の場合は、「様々な家庭環境の子が生徒」という前提があるために、高価なものを全員が購入しないといけないということにはなりません。
授業力・キメの細やかな指導力は公立中学校の方が断然高い!
授業の質・キメ細やかな指導力は、公立中学校の方が断然高いと言うと、驚かれることが多いですが、これは、公立という立場を理解すると納得できるはずです。
もちろん、私立中学校の中にも素晴らしい先生は、いらっしゃいますが、全体的な傾向としては、
という制約があります。具体例を挙げて解説します。
公立中学校の場合、学習は学校で完結させることが前提
先にも触れましたが、公立の場合は、
様々な家庭環境の子どもが通って来るということが大前提です。
ですから、
俺さぁ、三角形の合同の証明の仕方が全く分からないんだよ。
となった時に、できる限り手を差し伸べるのが当然です。ここで、
ということは、言えません。
塾に通える家庭環境の子どももいれば、経済的に厳しい環境の子もいるために、教師は、できるだけ学校で問題が解決できる様にアプローチをする必要がある訳です。
ですから、本当に熱意ある公立学校の先生は、驚くほどの仕事量をこななさくてはいけなくなるのです。
公立学校の基本的な姿勢・考え方は、【実例】公立小中学校はモンスターペアレントにも丁寧に対応する理由で紹介しています。
私立中学校の場合は、塾を勧めるケースも見られる
一方、私立中学校の場合は、「勉強が分からない」ということがあれば、
学校では、授業をちゃんとしていますから、それで厳しいようでしたら、どこかの塾に通われてはどうでしょうか。
と勧めるケースも多々あります。
もちろん、経済的なゆとりがあることが前提なので、塾を勧めても問題無いだろう…ということになりそうですが、
という声が挙がることもあります。
ところが、実際には塾に通っている子どもがかなり多いので、ある程度のことは塾で学んだものとして授業が構成されることが多く、学校にそのフォローを求めても対応してもらえないということも出てきています。
実際に、私立中学校で働く先生に、私たち公立学校で働く者の働き方を紹介するたびに、
そんなことまで仕事としてするのですか?
じゃあ、定時で帰宅することなんてできないじゃないですか。
そんな働き方は考えられません。
と言われたものです。
私立中学校の受験を検討される場合には、こうした立場の違いから生まれる指導者の教育観の違いがあるということも十分理解しておきたいものです。
もちろん、公立中学校・私立中学校の全てを一括りに見ることは、正しい訳ではありませんが、ここで紹介した様な傾向があるかどうか?という目で学校を見ることは大切です。
また、私立中学校から公立高校の受験は不利になる可能性も考えられますから、注意が必要です。詳しくは、【実例】私立中学を受験すべきか?公立高校受験には完全不利!をお読みください。
重要なことは、楽に自分らしく生きた人はいないということ
親であれば、子どもに苦労はさせたくないと考えたいものです。
そのため、「本人が希望するのであれば…」ということで、私立中学を受験させてそのままエスカレーターで大学まで行かせてやりたいと考えられる方もたくさんいらっしゃいます。
もちろん、この考え方でもいいのですが、私は自分の子どもに対しては、エスカレーター的に学校が決まる道を認めていません。
その理由は、
からです。
国内外問わず、だれかの伝記を10冊も読めば十分でしょう。
偉大なビジネスマンとして尊敬されている松下幸之助氏だって、本田宗一郎氏だって、大変な状況を乗り越えて来られた結果、偉業を成し遂げられているのです。
反対に、順風満帆に人生を歩み、何かを成し遂げた人を私は一人も知りません。
中学から高校に進学し、まずまず名の知られた大学に行き、卒業をすればそれなりの生活を送ることができるかもしれませんが、それで、自分らしい人生となるかどうかは、分かりません。
少々険しく、茨の道であっても自分で乗り越える力をつけて欲しいと思っています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
「自分が存在することで、誰かが喜んでくれる」という状態が幸せだと思いますが、これだけ物が豊かな時代なので、「誰か」よりも敢えて厳しい道を歩く必要があると思うのです。
もうちょっと楽にできたらいいなぁなんて思いながら、この記事を書きました。
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