ここ数年、子どもの根気について質問を受けることがあります。
- うちの子は、なんで根気がないでしょうか。
- どうすれば、根気強くなるのでしょうか。
あなたも、「最近の子どもは根気がないのでは?」なんて声を聞いたことがあると思います。
理由は、とてもシンプルで、
です。学級担任をしてきた経験や具体的な子どもの事例を挙げながら詳しく解説してきます。
もちろん、今日から実践できる簡単な改善策もあわせて紹介します。
根気がない子どもの具体例と生活環境
そもそも「根気がない」とはどういうことか?
という意味です。では、実際に私が関わった子どもで、保護者の方が「根気が全然なくて…」とよく言われていた子どもの具体例を紹介します。
根気がない子どもとは?【様子が分かる具体例】
楽子ちゃん(仮名)は、中学1年生。
学校では物静かな方ですが、友達も多く、おしゃべりをするのが大好きです。
ところが、少し手間暇がかかることは大嫌いです。
- 自分が飼って欲しいとおねだりした犬ですが、散歩は面倒だと言って嫌がる。
- 算数は好きだったが、答えがすぐに求められない数学は大嫌い。
- 英会話を習い始め、面白がっていたが半年くらいで飽きる。
大体さぁ、私は日本の中で生きていくから英語は要らないねん。
「マイナス×マイナス」なんて大人になってからしないやろ。
中学1年生の最初で学習する次の様な計算問題
7ー〔(ー2)2ー(9ー14)〕
を見ても、見た瞬間に…
あぁ、無理・無理!
こんな面倒な問題は、世の中から消えたらいいねん。
こんなことをしている暇があったら他のことをするわ。
こんな調子です。ほんの1シーンですが、様子がなんとなく感じられたと思います。
これまでにたくさんの家庭・子ども達と関わってきましたが、この「根気がない」「面倒だ」という状態は、多少形が違っても兄弟・姉妹で共通することが多いです。
本来、兄弟・姉妹は、兄弟喧嘩にうんざり?これを知れば兄弟の子育てが楽しめるの記事で紹介しているように、性格が大きく異なるのが通常です。
ところが、根気については、兄弟・姉妹で似ることが多いので、家庭環境の影響力がかなり強いと言っていいでしょう。
根気がない子どもの生活環境【怠けたわけではない】
楽子ちゃんは、有名私立小学校の受験に合格し、六年間真面目に過ごしてきました。
学校まで少し遠いのですが、毎朝早起きをして電車通学をしてきました。
学校から出された課題もこなし、学習塾にも通っていたので、成績もそこそこの状態です。
ところが、話を詳しく聞くと次の2点が特徴的でした。
- 学校や塾からの課題の出され方
- 忙しすぎる生活によって増えたスマホ時間
もう少し詳しく紹介します。
学校や塾からの課題の出され方がとんでもなかった
有名私立小学校や有名塾は、当然、実績が大切です。
5年生・6年生になると、進学先を意識してか、学校も塾も大量の宿題を出していました。
そして、翌々日くらいにはテスト。
ところが、評価されるのは、答えがあっているか・間違っているかだけでした。
スマホを使えば時間がなくても遊べる!
朝早くから学校に登校し、帰りに塾に通うと帰宅は、20時を少し超えます。
夕飯・就寝準備をする時間を考えると、ほぼ遊ぶ時間がありません。
ところが、スマホがあれば、ちょっと友達と話すこともできるし、ゲームや動画を楽しむことができるので、夜はスマホを存分に楽しんでいました。
スマホがあれば、公園に遊びにいかなくてもいいやん。
夜でも友達と話ができるし。
ほんの一例ですが、楽子ちゃんはこの様な生活を送り、姉妹の桃子ちゃんも同じ様な生活を送りました。
なぜ、この様な環境だと根気がなくなってしまうのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
根気強さは必要だから育つもの
根気強さ・諦めない心・粘り強さ…様々な表現がありますが、どれも大切だと言われてきた理由は、簡単です。
ひと昔前の暮らしから考える
夏に、おいしいトウモロコシやキュウリ・スイカが食べたいなぁ…と思ったとしましょう。
現代なら、欲しいと思った時にスーパーに行けば手に入りますが、ひと昔前は、そうもいきません。
春に入る頃に、夏野菜を植える準備をして、こまめにお世話をしてあげないと夏に食べることができないのです。
ちょっと世話をしてあげたからと言って、翌日にグンっと成長してくれる訳でもありません。
のです。
当然、こうした暮らしをしている人が多くいたので、「何事にも根気強く取り組む」という風潮が強くなります。
現代の暮らし「車を運転すると性格が変わる」が象徴的
チェッ、前の車、遅いんだよ。
おいおい、そんな所で減速するなよ。流れに乗って行けやコラ!
車の運転をすると、性格が変わる方もいます。
なぜ、この様な変化が起きるのか、様々な視点で分析されていますが、一つには、
なんて思わず、早く行けて当然と思っているからです。
アクセルを踏めば、スピードが上がり、目的地に早く到着できるのですから、気を長くして運転する必要がありません。
子ども達が夢中になるスマホも同じです。
パッとボタンをタップすれば、今すぐに面白いゲームができたり、動画を見ることができます。
ということです。
つまり、根気なんか必要なくても十分いろいろな事ができるじゃないか!ということを子ども達は言葉にしないけれども、心のどこかで感じているのです。
実は、スマホはこうした心理も含めて設計されています。詳しくは、なぜ、子どもがスマホ依存になるのか?【脳の仕組みから解説】で紹介しています。
また、根気と脳の関係は根気強くなるには意思や訓練が重要?脳内の仕組みを解説で詳しく解説しています。
じゃあ、ウチの子ども達に根気強さを身につけさせるにはどうしたらいいの?
根気強い子どもを育てるには自然に近い時間を設けること
根気が必要ない暮らしというのは、一言でいうと、
というものでした。
残念ながら、楽子ちゃんは、学校や塾から出された膨大な宿題や評価の仕方を通して、「なぜ?」という所を考えずに、パッと答えが出た方が良いということを学んだのです。
「とにかくたくさん問題を解かす・たくさん暗記させる」ことが行き過ぎると子どもは何を学ぶのか、学校や塾は真剣に考えるべきです。
私が楽子ちゃんの親であれば、即学校も塾も辞めて、海や山に遊びに連れていきます。
ところが、そんなことまでしなくても、今日から根気強さを育てるために暮らし方を変えることは簡単です。
をすればいいのです。つまり、自然と同じ様な時間の流れを感じることを意図的に生活に取り入れると良いのです。
いくつか具体例を紹介します。
- 子どもに料理を教えて、任せてしまう(上達に時間がかかる)。
- 時々、山登りや魚釣りに出かける(山頂につく・釣れるのに時間がかかる)。
- 駅までの送迎を辞める(自転車や徒歩で駅まで行かせる)。
- テレビ・スマホを使わない日を設ける(すぐに反応があるものを避ける)。
- 筋トレをする(体力がついたと実感するのに時間がかかる)。
この様なことは、今日からでも実践できるはずです。
子どもに根気強さを求めるのであれば、大人も根気強く声を掛けたり、一緒にしたりする必要がありますが、案外、いい時間だなぁと感じるはずです。
「テレビ・スマホを使わない日」を設けてみると、子どもはかなり落ち着きはじめます。詳しくは、子どもがスマホに依存して困ります【自己管理できる様にした具体策】で紹介しています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
これからはAR・VRの技術が生活に浸透して、山や海に行かなくても、その場の気分を簡単に味わえるようにもなるでしょう。
けれども、「根気」の「根」には、眼・耳・鼻・舌・身の五感の意味も込められていることを大人は忘れてはいけない気がするのです。
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