子ども達に、「良い塾・良い教師ってどんな人?」と聞くと、
と答えます。これに異論はないでしょうが、行き過ぎると注意が必要です。
私は、これまでに有名私立小中学校のママが集まる場に何度か呼ばれていますが、その場の会話にいつも驚かされます。
友達の子は、根力塾よりスマート塾の方がいいって言ってたわ。
スマート塾に移ってから、成績がグンって上がったみたい。
授業も分かりやすいみたいなの。
だから、うちの子もスマート塾に移ることにしたの。
スマート塾、評判いいわよね。
ちょっと宿題が多いみたいだけど、もの凄いたくんさん問題を解くみたい。
そりゃ、成績がグンと伸びて当然ね。うちの子も検討するわ。
オホホホ…。
こんな会話が、続きます。
公立学校で教師をしながら見てきた世界とは、もはや異次元です。
もちろん、勉強をすることはいいのですが、この様な発想の場合、「危険である」こともお伝えするようにしています。
ためです。
ですから、私は次に様なことを経験するために勉強をする
真剣に悩む練習をするために勉強をする
ということもお伝えしています。
正解だけ求められた子は勉強をする理由を考えられない
真剣に悩むことは、思考力を育てるのに大切な過程です。
ところが、学校や塾によっては、何よりも実績を重視しないといけない場合があります。
その様な場合、本来3年間で学ぶことを2年間で終えて、最後の1年は、受験に備えるという学習スタイルになります。
教科書に掲載することをどの様に表現すればいいのか? 子どもはどの様な思考をするのか?こうした研究にも関わってきた立場からすれば、小中学校で、3年間の学習を2年間で指導することは、子どもにかなり無茶をさせなくては実現させることはできません。
早く物事を処理すれば、何かしら失うものもあるということです。
早く学習を進めるために、教科書を使わない学校もたくさん見てきましたが、宝物を捨てているようなものだと思います。詳しくは、成績アップを狙うなら教科書を使え!【教科書レベルは最強】をお読みください。
「考え方」よりも「やり方」が重視される
物事を早く進めるには、とにかくやり方を覚えるのが一番です。
例えば、小数×整数の計算を考える時にも、なぜ、下の図の様なところに小数点がくるのか?
小数点より下の位が1つだけだから、
答えもそうなる様に小数点を打てばOKだ。
覚えておきましょう。
なんや、そうしたらいいだけか。
簡単・簡単。どんどん問題が解けちゃう。
さて、あなたはこのやり取りを見てどう感じるでしょうか。
はなちゃんは、言われたことを処理しましたが、何か考えたでしょうか。
ちなみに、先日、アメリカの子ども達と小数×整数について話をしていたところ、
- 大体で計算したら21か28くらいになるでしょ。
だからそこに小数点があっていいと思う。 - 面倒くさいけど、私は3.6+3.6+3.6…って7回足したから確かです。
- 36×7より絶対小さくなるでしょ。
こんな話になりました。
こんな話をしていると決められた時間内にたくさんの問題を解くことはできませんが、はなちゃんよりずっと深く思考したと思います。
こうした経験がどれだけ大切か。
今、「やり方」重視で勉強をしてきてしまった中学生の勉強のし直しに関わりながら、一旦、考えてみる・試してみることの大切さを痛感しています。
もう少し、具体例を挙げてみましょう。
やり方」重視で学んできた子は30分も悩むことができない
先日もある中学生と上記の様な問題を解いていました。
彼は有名私学・有名塾に通っていましたから、十分な学力があると思われましたが、上記の問題で困ってしまった様です。
もう一度、私の前で0から考え直す様に伝えたところ、5分も経たないうちに、
マジで分からない。
どうやってやったらいいのか分からない。
やり方を教えて?
と言い出しました。にも関わらず、彼のノートは真っ白です。
つまり、彼は、
です。ここでえ、最も大きな問題は、問題が解けたかどうかではありません。
- とりあえず似た様な図を描いてみる。
- ヒントとなりそうな補助線を引いてみる。
- 仮に数字を入れて考えてみる。
などのことをやってみることが大切です。
中学生なら最低30分くらいは悩んでもいいじゃない?
〇〇してみようとか、……してみようとかブツブツいいながら苦しんだらいいやん。
そんなことをしていたら、なんぼ時間があっても足りんわ。
鬼やなぁ。
こんなやり取りになりますが、全く気にしていません。
考え方を教えて、理解できたからと言って、思考力は高まらないからです。
反対にじっくりと考える習慣が身についてきた子は、1時間でもじっくり考え続けることができます。
もちろん、こんなことができる子は、難易度が高い問題も楽しみながら挑戦するので、力はメキメキと付くことは言うまでもありません。
そんな時間の使い方なんかできない!と思う方は、【具体例】根気がない子どもに育つ環境とシンプルな改善策を参考にしてください。
根気って本来は誰もがもっているものだと感じることができるはずです。
勉強をする理由の1つは長時間悩み、思考錯誤できる力をつけるため
「長時間悩み、試行錯誤したけれども、答えが間違っていた」なんてことは多々あります。
一見、無駄足だったようにも感じられますが、
のですから、「試行錯誤」がとても重要になります。
例えば、2022年1月現在では、
従来通りの売り上げに戻すにはどうすればいいのだろう?
こんな問題に悩まされている方もたくさんいらっしゃると思います。
もちろん、そんな中でも力強く業績を伸ばしている会社の事例もたくさん紹介されていますが、同じことをすれば上手くいくなんていう万能の公式はありません。
試行錯誤をしながらよりよい解決策を見つけるしかありません。
ただ、この試行錯誤を根気よく続けるということはとても困難なことです。
- こんなことを試して本当に意味があるのかなぁ。
- こんな考え方をして、いい結果が出せるのかなぁ。
- 「無駄じゃないの?」とバカにされないかなぁ。
いろんな思いがよぎるものです。
ただ、こうして見ると、これらの感情は、難しいなぁと思った学校の勉強・問題について試行錯誤をしている時の感情と同じだということが分かります。
ですから、私は学校の勉強・問題に困り、しっかり悩むことは社会で力強く生きるための練習の場だという風に考えています。
そう考えると、早く問題が解けるように「やり方」を分かりやすく先に教えるということは、子どもが力強くなる機会を奪ってしまうことにもなると思うのです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
じっくりと試行錯誤ができる様になってくると、1時間に1問も解くことができないということが増えてきますが、そうなった時に「成長したなぁ」と感じます。
これができるようになってくると、私も塾も不必要になります。
ちょっと寂しいですが、それでいいと思います。
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