スマホやタブレットが社会に普及し、多くの学校にタブレットが導入されました。
また、Z会やベネッセなどもタブレット学習ができる形を整え、今では、様々な会社が通信教育サービスをタブレットで受けることができる様になりました。
画期的な変化ですが、最近(2022年)になってからは、
という声も増えてきたように感じます。
私の場合は、公立学校の教員を経験し、現在も小学生〜大学生までの子ども達と関わっていますが、こうした経験からも、タブレット学習にはデメリットが大きいと判断しています。
なぜ、この様なことが言えるのか? 研究の結果や私の経験を交えて解説します。
学習に限らず何でも深く理解するには必ず試行錯誤が必要
ものごとの理解の程度にはそれぞれレベルがあります。
例えば、
というものがあります。
これに対する理解の程度は様々です。
- とにかく、逆数(分母と分子をひっくりかえした数)を掛けたら答えが求まる。
- なぜ、逆数を掛けるといいのか理由を説明することができる。
当然、後者の方が理解のレベルが高いということになりますが、ここまで理解するとなると、自分なりに絵や図を書きながら試行錯誤をする必要があります。
仮に、考え方を全て解説をしても、子どもは「分かった感覚」になっているだけで、すぐにこの様な図を描くことはできません。必ず試行錯誤が必要です。
勉強以外の面でも試行錯誤はとても重要です。
ということです。
この様な人の性質というものを踏まえると、タブレット学習をすれば、学習理解が深まるというのは期待しすぎだと言えます。
実際に私は2つの学級で台形の面積に関する授業を
- デジタルツールを使って効率的に進める
- アナログ的に地道に進める
ということを行い、結果を分析したことがあります。
その結果については、学力を高めたいのなら身体を使え!手書きが超効果的で詳しく紹介していますので参照してください。
スマホを使う頻度の高い子どもは脳の発達が止まる!
スマホやタブレットが子ども達の間にも普及して、数年が経過しますが、子ども達はどの様に変化したでしょうか。
スマホやタブレットがあることで、
- 学習について分からないことがあればすぐに調べることができる。
- 準備や複雑な機材が必要な実験も動画で簡単に見ることができる。
いつでもどこでも、素晴らしい学習コンテンツに触れることができる様になった分、学力が高くなったでしょうか。
きっと多くの方が、
と感じていると思います。なぜ、こんなことが起きるのか?
その要因の一つに、「脳の発達が止まる」ということも考えられます。
こちらの記事の一部を引用します。
スマホを使う頻度の高い子どもの脳をMRI装置で調べたところ、学力を含む、子どもたちの認知機能に大きく関わる大脳の約3分の1の領域と、大脳白質(神経線維)の多くの領域の「発達が止まる」という衝撃の結果が得られたのです。
(集中力が「金魚レベル」になるスマホ漬けの脅威より引用)
なぜ、脳の発達が止まってしまうのか?については、まだまだ分からないことも多いですが、人がもつ能力の本質は、「種族を保存するために必要な能力は発達する」ということです。
一例を挙げると、「これまで人類は、飢餓・天災などを恐れてきた」ということで、これらの問題をなんとか、解決しないと生命・種族の保存が脅かされるという状況でした。
だから、人々は自然を様々な角度から分析的に見て、改善策を考えたり、予測するための考え方を発見してきました。
この様な高度なことをするには、脳がある程度発達していないとできません。
ところが、スマホ・タブレットを上手に活用すればするほど、必要な情報(答え)をすぐに見つけることができるために、高度な思考は不要になったのです。
私たちの身体は、不要なものに多くのエネルギーを費やすなんてことはしない構造になっているために、スマホ・タブレットを使えば使うほど、脳の発達が止まる傾向が強くなると推測しています。
人の本質的な性質を理解しながらスマホとの付き合い方を考えるには、名著「スマホ脳」をお読みください。参考になる点がたくさんあるはずです。
AI型タブレット学習(アダプティブラーニング)の活用は要注意!
近年では、AI型タブレットが出てきて、Monoxer(モノグサ)の様なアプリも見られるようになりました。
Monoxer(モノグサ)って何?という方は、この動画をご覧ください。
AI型タブレットを活用すると、次の様なことが可能になります。
- 記憶の程度を把握してくれる。
- 自分の苦手なところを分析して出題してくれる。
素晴らしいツールなので、
とりあえず、テストの結果さえよければ良いと考える人にとっては、便利です。
ところが、
ということになります。どういうことか解説します。
なんで、デメリットなのよ?
テストの結果が良くなって、成績があがればいい大学にだって行けるでしょ。
社会にはどこに課題(弱点)があるのかすら分からないことが多い
簡単な例を2つ挙げてみます。
仕事に明確な答えがないから原因を追求する
あなたが小さな飲食店を営んでいるとしましょう。
残念ながら経営状態が厳しくなり、ここで何とか再建させないといけないとなった時に、もちろん課題点は何かを考えるでしょう。
- 味に問題がある。
- 店内の雰囲気に問題がある。
- そもそも認知されていない。
- 価格に問題がある。などなど…
いろいろな要素が考えられますが、何が課題点なのかは、分からないものです。
ですから、課題点を見つけるためにも試行錯誤をするわけです。
何か素晴らしいツールが、的確に問題点を指摘してくれるなんてことはありません。
子育てにも明確な答えがないから試行錯誤をする
子育てでも全く同じです。
もっと勉強を楽しんで欲しい・周りに気遣える人になって欲しいと願っても、子どもはそんな風に育ってくれません。
何が原因で「勉強を楽しむことができないのか?」という答えは人それぞれです。
だから、
- 勉強する環境に問題があるのか?
- 先生との相性に問題はないのか?
- ものごとの受け取り方(解釈)の仕方に問題がないのか?
- そもそも気にしすぎるのが良くないのでは? など…
親はいろんな可能性を考えて、次の行動を決めているのです。
自己分析は自分でする必要がある
論語(2500年前から伝えられているもの)の一節に次の様な言葉があります。
学びて思わざれば罔(くら)し。思いて学ばざれば殆(あやう)し。
前半部分は、自分で考えることを怠ると、知識が身につかないという意味です。
つまり、深くものごとを学ぶには、必ず「自分で考えること」をしないといけないということで、2500年もの間、「多くの人が確かにそうだ」と感じてきたことです。
私は、これまでに1000人以上の子どもと関わり授業を行ってきましたが、授業の中で必ず考える部分を設けないと、子どもは成長しないということを確信しています。
考え方が正しい・間違っているが重要ではなくて、まず、
と、言えることが、深く理解する第一歩なのです。
この様に、人の成長や暮らしで出会う問題を改めて見ると、苦手なところを自動に指摘してくれることは、果たして人を幸せにすることに繋がるのだろうか?と考えてしまいます。
AI型タブレット学習(アダプティブラーニング)アプリは自己分析が不要
この様に、私たちの暮らしを見ると、
はとても重要なことであり、学校の勉強を通して、この様な練習ができることが分かります。
ところが、AI型タブレット学習は、自己分析をしなくても課題点を明示してくれます。
つまり、
- テスト対策さえできれば良い→とても効率的
- 幅広い視点で「学ぶ」というものを見た時→自己分析をする機会が激減してしまう
という見方ができます。
私の場合は、テストさえいい結果が出せれば良いという考え方はしていませんから、古くからあるように、アナログ的に学習することが、多くの学びにつながると考えています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
大きな仕事・時間を必要とする仕事に取り組む時、「まずは段取りから」なんて言われることがほとんどだと思います。
アナログ的に学習することは、段取りを考える練習にもなると思うのです。
この後、大きな仕事の打ち合わせがありますが、段取りを意識したいと思います。
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