子育てをしていると、子どもが全然言うことを聞かない!なんてことは日常茶飯事です。
少し成長した小・中学生でも、「なんで?」と思うことはたくさんあります。
例えば、
何時だと思っているの?
いい加減ゲームを辞めなさい。
分かってるって。
今、いいところだからこれが終わったら辞めるよ。
10時にはゲームを辞める約束でしょ。
そんなこと言うなら、勝手に好きなだけしなさい💢
その代わり、私も好き勝手するわ。弁当も作るの辞めるわ。
こんな風景って日常的に見られますが、この様な話の進め方を「ダブルバインド」と言い、これには大きな問題があります。
結果として、
- 親子関係が崩れてしまう。
- 子どもがゲームの世界に浸りやすくなる原因にもなる。
反対にあなたが「ダブルバインド」を意識することができれば、
- 親子関係も非常に良好になる。
- 子ども同士の人間関係も豊かになる。
こんなことが期待できますから、この機会にどういうことか知っておきたいものです。
そもそもダブルバインドって何?子育てとの関係は?
「ダブルバインド」とは何か?まだまだ馴染みがないかもしれませんので、詳しく解説します。
ダブルバインドとはどういう意味か?
直訳すると「2重の拘束」という意味になります。
上の写真の様に、バインダー(紙を拘束する道具)をイメージしても分かりやすいと思います。
では、子育て中についついしてしまうダブルバインドとは、どういうものか解説します。
先に例として挙げましたが、
子:「今、いいところだからこれが終わったら辞めるよ。」
母:「そんなこと言うなら、勝手に好きなだけゲームをしなさい。」
ダブルバインドとは、細かい定義の様なものがありますが、簡単に言えば
です。きっとこんな言葉の説明より、具体例の方が分かりやすいですから、もう一つ例を挙げてみましょう。
子:「分かっているって…でも、部活があるからどうしても時間がないんだ。」
父:「そんな言い訳が通用する訳ないだろ。」
子:「でも、これ以上、勉強時間を増やすのはマジで無理だよ。」
父:「簡単に無理って言うくらいなら、合格は無理だ。勉強なんか辞めてしまえ!」
もちろん、お父さんの意図は、「もっと勉強を頑張って欲しい」ということですが、言っていることが完全に矛盾しています。
ですから、これもダブルバインドの例となります。
きっとあなたも似た様なことを言った記憶があるはずです。
もちろん、私も過去に教師としても父親としても、ダブルバインドに該当する言葉を何度もかけてきました。
なかには、「こんなに拘束するつもりは全然ない」「心から穏やかな気持ちで子どもと付き合っています」という方もいます。
けれども、悪気は一切なくてもダブルバインドになってしまうことが多々あります。
気付かずやってしまう優しいダブルバインドって?【親子関係改善策】の記事では、そんな事例や学校(教師)が生徒にしてしまうダブルバインドについて解説しています。
なぜ、親は知らず知らずのうちにダブルバインドしてしまうのか?
では、なぜこの様な複雑な表現を誰もがやってしまうのでしょうか。
理由は3つ考えられます。
- 自分も幼少の頃から何度もダブルバインド的な言葉を聞いてきた。
- ゆっくりと説明・意見を交換するのが面倒だから。
- 即効性が高いから。
あなたも経験があると思いますが、ダブルバインド的な表現を使うと、子ども達の行動はすぐに変化することが多いです。
「好きなだけゲームをしなさい!」と言われて、「ヤッター。お母さん、ありがとう」なんて言う子はまずいませんから、効果絶大となるケースは多いと言っていいでしょう。
ただ、考えないといけないのは、なぜ、効果絶大なのか?ということです。
なぜ、ダブルバインドは即効性が高いことが多いのか?
ダブルバインド的な言葉は、なぜ即効性が高いことが多いのでしょう。
- 子どもが混乱をし、自分で判断ができなくなり言うことを聞く。
- 逃げ場のない脅迫観念に襲われて言うことを聞く。
つまり、様々な状況を理解してベストな判断をしているのではなく、「訳が分からなくなる・最悪の事態は少なくとも避けたい」という心情から、言うことを聞いておくのが一番楽と判断した結果なのです。
こうして見ると、ダブルバインドには大きな問題点があることに気づきます。
では、ダブルバインドをたくさん受けた子どもはどうなるか見ていきましょう。
ダブルバインドをたくさん受けた子どもはどうなるか?
学級担任として、たくさんの保護者と関わってきたために、親が子に対してどの様な言葉掛けをしてきたのかは、分かります。
ダブルバインド的な言葉掛けの多い家庭の子どもは、
- 何でもない場面でも、友達に対してダブルバインド的な発言をする。
- 条件付きでないと行動をしない。
という傾向が強くなり、結果として、子ども同士の人間関係につまづいてしまいます。
具体例を挙げてみましょう。
なぁなぁ、今日帰ったらゲームして一緒に遊ぼ。
今日はお姉ちゃんの友達と遊ぶ約束があるの。
また今度一緒に遊ぼ。
せっかく「動物の森」を買ったから誘ってあげたのに…。
もう誘わへんわ。お姉ちゃんの友達と楽しく遊んだらいいじゃん。
こんな感じで、脅迫の様に感じる人も多いでしょう。
子どもの年齢にもよりますが、小学校3・4年生くらいまでは、この脅迫的ダブルバインドで人間関係はなんとかなりますが、高学年にもなるとガタガタと崩れていきます。
そして、この人間関係の崩れに気づいた子は、さらに自分を守るために次の行動をとる傾向が強くなります。
- さらに脅迫性の強いダブルバインドで自分の周りの人間関係を固める。
- 支配できるものが無くなり、ゲームやSNSの世界に浸る。
まさに、負のスパイラルが始まります。
今、直接関わっている子もダブルバインド→ゲームにはまるという流れを感じたので、ダブルバインド的発言を保護者の方に意識して減らしていただいています。
なぜ、ダブルバインドがゲームに関係するのかは、不登校の子どもがゲームに逃げる本当の理由と改善策の記事を読んでいただけると分かると思います。
どうやってダブルバインド的な発言を辞めるのか?
こうして見ると、ダブルバインドのデメリットが強く感じられますから、ダブルバインドを辞めたい!と言われる方もいらっしゃいますが、完全に0にする必要はありません。
できることならダブルバインド的発言を0にしたいところですが、なかなか0にすることは難しいものです。
だからと言って、0にできないからダメと落ち込む必要は全くありません。
ダブルバインド的発言は、意識的に控えるだけでOK
ダブルバインド的な発言は、デメリットが大きいですが、「意図を汲む」一つの機会にもなります。
分からないことがあったら何でも先輩や私に聞いたらいい。
これからの仕事に期待しているぞ。
社長、7月のイベントの案内ですが、何を書いたらいいでしょう。
それを考えるのが君の仕事だろ。
何でもすぐに頼るのは辞めなさい。
こうしたことは、社会では日常茶飯事です。
その度に混乱をし、適切な判断ができなくなっては困りますから、ある程度ダブルバインドの矛盾に慣れておくことも必要です。
ですから、完全にダブルバインドを0にしないといけないと思う必要はなく、言ってしまった後に「あぁ…言ってしまったなぁ」と振り返ることができれば十分です。
もっと落ち着いて子育てをしませんか?
そもそも、ダブルバインド的な表現を使ってしまうのは、支配欲や即効性を求めるためでしたから、これらの欲求を諦めてしまえば、ダブルバインド的な表現は激減します。
大切なのは、
という感覚をもつことです。
そもそも即効性を期待しなければ、次の様なことも変だと感じることができます。
- 急に成績がぐんぐん上がる→カンニング?
- 急にダイエットが成功する→変な薬を使ったのでは?
- 性格が急に明るく・社交的になる→ドラッグ?
子どもだって同じで、反発した時には何らかの考えや想いがあるのだから、時間がかかると覚悟することです。
と理解しておけば、子どもが思い通りに行動しなくても腹も立ちません。
だからと言って何でも容認するのではなく、時間をかけてお互いに意見を交換し続けることが大切です。
私の息子の場合、音楽を聴きながら勉強をするのが楽しいようですが、私は断固として反対をしています。
完全に意見が食い違っていますが、違うからこそ様々な考え方をお互いに話すことができました。
きっと、「音楽を聴きながら勉強するくらいなら辞めてしまえ!」なんて言えば、本当に集中力は下がるのかどうか実験をした人がいるなんて話にもならなかったでしょう。
焦って結果を出すことなんて求めていませんから、意見が親子で食い違っても様々な話をする機会になって楽しいなぁと思えるのです。
音楽を聴きながら勉強をすることについては、音楽を聴きながらの勉強ってどう?【オススメしない理由】を参考にしてください。人間になぜ耳があるのか?ということまでさかのぼって解説しています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
学校や塾の成績が気になる…、進学先の学校が気になる…という方は、ダブルバインドで勉強をさせようとされるケースが多いので注意してください。
なんて言いながら、公立学校も「学力向上!」を掲げるようになりましたから、教師も注意したいものだと思います。
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