教育実習生や教員採用試験を目指す方に限らず、現役の先生方の多くが困るのが「学習指導案を書くこと」です。
私が新規採用されたころに最も驚いたのが、指導案を書くことは大切だとどの先生も言われますが、率先して「指導案を書く」という人が皆無だということです。
もちろん、学習指導案を書くことは手間がかかりますからこうなる気持ちもよく分かります。
けれど、同じ指導案を書くなら「楽しい気持ち」「前向きな気持ち」で書きたいと思いますから、私の経験を通して、
- 指導案を書くのが嫌になってしまう原因
- 指導案がスラスラ書けるようになる方法
について解説します。教員採用試験でも活用できるはずです。
今回の話が分かれば、指導案を見るときの視点、自分が書くときの視点もかなり明確になります。
では、早速、本題に入りましょう。
現役バリバリの先生も学習指導案を書くのが嫌な理由
学習指導案を書くことは大切ですが、指導案を書くのが嫌いという先生が圧倒的多数です。
その理由は
- ただでさえ、超多忙にも関わらず、指導案を書くのは辛い。
- せっかく書いた指導案も、指導案検討会・研究授業などで、散々批判を浴びる。
- 長年の経験者でも、そもそも指導案の書き方が分からない。
このためです。
特に、ここでは、長年の経験者でも、そもそも指導案の書き方が分からないことにフォーカスして話を進めます。
実は指導案の「単元について」を書くのが大変
実は、私が新規採用者の頃こんなことがありました。
指導案を書いた上で、授業実践をして委員会に提出しないといけません。
で、指導案をいくつか拝見したのですが、「単元について」の項目には、結局何を書いたらいいのか良く分かりませんから教えてください。
あぁ、先生も相当忙しいですから、「単元について」は、指導書に書いてあるものを噛み砕いて自分なりにアレンジしたらいいですよ。
様々な先生にこの様な質問をしたのですが、概ね似た様な返答でした。
意外と多くの先生方が、これまでの慣習に従って指導案の「単元について」を書いていることが分かりました。
ということで、実際に言われた通り、指導書を参考に単元について書いてみると…
- 指導書の内容をそのまま書いてもダメだ。
- 子ども達の実態を踏まえて書かないとダメだ。
と言われしまいました。当然と言えば当然の結果です。
何を書くべきところなのか分からないまま、学習指導案っぽい文章を書くなんてもはや神業でしかありません。
学習指導案のフォーマットが学校・自治体で大きく異なる
指導案を書くときに、他校の実践を参考にする場合も多いでしょう。
ところが、学校や自治体によって学習指導案のフォーマットが大きく異なるために、参考になった部分が、自校の指導案のどこに該当するのかと迷う場合もあります。
多忙な日々の中で、帰宅後にこの様なことをしていると結局、思考がごちゃごちゃになってしまうということを私は散々経験してきました。
こうなると、「楽しく授業をする」ということからどうしても遠のいてしまいます。
それでも、教材観・児童観・指導観の区別が明確になっていないところもある気がするの。どう理解したらいいの?
【簡単】学習指導案の「単元について」は授業組み立ての超基本
学習指導案の「単元について」は、学校や自治体によって形式が異なりますが、基本的な考え方は、どんなフォーマットでも同じです。
実際に学習指導案を書かない場合でも、私は次の3点を意識して授業を組み立てます。
慣れてしまえば、3分程度で授業を組み立てることができますから、採用試験の模擬授業を考える際にも役立てください。
分かりやすくするために、究極に簡単にして解説します。
教材観 | 児童観 | 指導観 |
【理想】 授業後に こうなったらいいなぁ… |
【現実】 今は〇〇はできるけれど 〇〇はできない |
【手段】 〇〇ができないなら どうする? |
学習指導案に限らず、私たちは日常的にこの様な思考をしているはずです。
例えば、
教材観的な見方 | 児童観的な見方 | 指導観的な考え |
【理想】 もう少しお金が 欲しいなぁ |
【現実】 でも今は かなり貧乏だ |
【手段】 徹底的に 自炊をして節約だ |
大人の場合は、自分で手段を選択し、実践することができますが、小・中学生には手段を提示するというサポートをしても良いだろうという風に考えます。
では、「直方体の体積を求める公式を考える授業」をイメージして、この表を埋めてみます。
教材観 | 児童観 | 指導観 |
【理想】 直方体の体積を 求める公式を 作ることができる |
【現実】 絵に描かれた 1㎤の箱の数は 数えることができる |
【手段】 意図的に体積の大きな 絵を提示して1㎤の 箱の数を数えさせる |
こんな図を提示すれば、子どもは自ずと掛け算を使うだろうと予測できますから、手立てとなりうると考えていいでしょう。
さらに深く考えるのであれば、
- 4×4=16 16×4=64
- 4×4×4=64
の二つの考え方が出てくることが予想されます(児童感)。
これを一つの式に表すところまでを目標にするのであれば、ここで、2つの式を一つの式表す手立てを考える必要があります。
ただ、手立てと言っても、「2つの式を一つの式に表してみましょう。」と言うだけで、子ども達ができる状態であれば、声を掛けるというだけでも十分だということです。
この様に考えていくと、必然的に単元についての「教材観・児童観・指導観」が明確に見えてきます。
【補足】学習指導案に良くないことは書かない方がいい?
特に、古い体質の学校の指導案について話を伺うと、児童観にあたる部分に「悪いことは書かない方が良い」と言われる場合があります。
これは、指導案を外部にオープンにする研究発表会を行う際に、指導案も公開するためです。
ただ、授業を行うということは、子ども達にまだ至らない点があるから授業を行うために、どうしても児童観には、「課題となる点が挙がる」のが当然のことです。
ですから、
などと、少し表現を和らげておく方が良いということです。
こうした表現がされているために、指導案を見た時に、「単元について」は結局何を書いたらいいの?となってしまう側面もあるということです。
こうした事情まで理解した上で、先に触れた3つの視点を常に理解しておけば、指導案を書くことはそんなに苦しい作業ではなくなるはずです。
採用試験の模擬授業でも、自治体によっては、学習指導案を書くことが求められる場合がありますが、今回の思考の仕方で、まずは整理してみることをお勧めします。
公立学校の教師ってどんな感じなのかは、公立学校の教師のメリット・デメリット【給与明細も公開】の記事を参考にしてください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
今回触れた考え方のトレーニングは、日常生活でも練習することができます。
私は今、こんなことを考えています。
教材観的な見方 | 児童観的な見方 | 指導観的な考え |
【理想】 腹筋を割りたい |
【現実】 まだ割れ目が見えない |
【手段】 筋トレ+マッサージで! |
結果が出るまでに時間がかかりそうですが、のんびり行こうと思います。
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