公立学校の教師のメリット・デメリット【給与明細も公開】

不況が長引くと、「公務員っていいなぁ」と言われることもあります。

その一方で、「学校の教師って大変じゃない?」なんてことも言われてきました。

とは言っても、受験勉強の開始はいつから?【遅すぎた高校生の返り咲き事例】にもあるように、「教師になりたい」と言う人もたくさんいます。

そこで、実際に公立学校の教師という仕事をしてきた経験を通して感じたメリット・デメリットを経済的な面から紹介します。

 

目次

公立学校の教師のメリットとは?

公立学校の教師として働くメリットは、一言で言えば「安定」です。

具体的にはこんな感じです。

  • 真面目に働いていれば「クビ」になることはない。
  • 経済的な利潤を追求しなくても良い。
  • 育休・産休に対する理解は得られやすい。
  • 社会的地位がある(住宅ローンなどは即通る)。

真面目に働いていれば「クビ」になることはない。

時々、学校教員の不祥事が報道されますが、それは特殊なケースです。

普通に出勤し、やるべきことをしていれば「クビ」になることはありません。

少子化が大きな問題となっていますが、さらに少子化が進めば、学級の児童・生徒の上限人数を引き下げると、学級数が増えるために、仕事がなくなるなんてことはありません。

「終身雇用の時代は終わった」とよく言われますが、基本的に公立学校の教師であれば、終身雇用されるのが現状です。

 

公立学校は経済的な利潤を追求しなくても良い

一般企業から公立学校の教師になった方は「利潤を気にしなくても良い」点は、とても嬉しいと言われます。

ただし、近年では「学力向上」を掲げる学校がほとんどですから、子ども達の学力の伸びで評価されるという側面はあります。

とはいうものの、子ども達の学力が伸びなかったから減給されるなんてことはありませんから、一般企業からすれば、働きやすい環境だと言えそうです。

 

育休・産休に対する理解は得られやすい

学校は常に子どものことを考えている職場です。

当然、育休・産休が必要だという話をすれば、「制度として認められているから」というだけではなく、心からの「おめでとう。ゆっくり休んで!」という声が挙がってきます

もしろん、育休後の復帰もみんなが気持ちよく受け入れてくれます。

私も子どもが小さい頃には、保育園の送迎のために、早く学校を出ることが多々ありましたが、気兼ねすることはありませんでした。

こうした風潮は、精神的にも嬉しいものです。

教師という仕事は非常に忙しいですが、子育てと仕事の両立はしやすいです。

私が教師をしている頃は、仕事と子育てを両立させるコツ【親が頑張らないこと】で紹介しているようなことをして乗り越えてきました。

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社会的地位がある

公立学校の教師だからと言って、人間的に偉いという訳ではありません。

ただ、社会的には「収入が保証されている人」という見方が強いために、住宅ローンの審査は、一般企業よりも遥かに通りやすいです。

一般企業の場合、勤続年数も考慮されることがほとんどですが、公立学校の教師であれば、勤続3年程度でも、住宅ローンは通る可能性が高いです。

私の場合は教師2年目に入った時に、住宅ローンを組むことができました。

プライベートな人生設計は、随分しやすいのはかなり大きなメリットです。

 

公立学校の教師のデメリットとは?

公立学校の教師の給料は、「税金から支払われている」という点が非常に重要です。

  • 児童・生徒(お客様)を選択することはできない。
  • 残業という概念はない。
  • 有給は長期休暇(夏休み・冬休み)しか取りにくい。
  • 超絶、忙しい。
  • 行政の方針に従わなくてはいけない。

それぞれ解説します。

児童・生徒を選択することはできない。

校長先生
校長先生

今度、先生にもってもらうクラスの〇〇さんのお母さんは、刑務所から出てきたばかりなんだ。だからと言って、子どもが何か言われるのであればおかしいことだ。子ども同士の会話にも注意してくれるか。

当たり前のことですが、公立小中学校が児童・生徒を選択することはできません。

これまでの私の経験で言えば、

  • 出所されてきた方の子ども
  • 極道と呼ばれる方の子ども

なども担任してきました。

だからと言って、子どもに問題があった訳ではなく、日々、楽しく子どもと過ごしていましたが、「何か問題がおきたら大変?」なんてビビったこともあります。

一般企業の場合、ある程度お客様を選ぶことができることが多いのに対して、公立小中学校の場合は、児童・生徒を選ぶことができないのは、大きな違いです。

ちょっと笑ってしまうようなモンスターペアレントにも遭遇してきました。詳しくは、【実例】公立小中学校はモンスターペアレントにも丁寧に対応する理由で紹介しています。

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残業という概念がない

Shibuyan
Shibuyan

子どもが夜になっても自宅に帰ってこない!なんて連絡があって、夜遅くまで探し回っても残業代が増えるなんてことはありません。

基本的に「公立学校の教師になろう!」という方は、情熱的で良い人が多い印象です。

ですから、「お互いに頑張って仕事をしよう」という風潮になりやすいのですが、教師には残業という概念がありせん。

一般企業で言えば、残業手当というものがつきますが、公立学校の教員の場合は、

教職調整額

というものが支給されるので、残業手当がつきません。

これは、違法ではなく、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法で定められているので、法の改正があるまでは、変わることはありません。

この制度を一言でいうのであれば、

定額で働かせ放題!!

ということです。ここで、私の明細をドンっとお見せします。

多くの先生方は、

  • テストの採点、授業で使うプリントの作成は自宅で作業。
  • 通知表をつけるための資料の整理も自宅作業。
  • 学校行事(学芸会・野外活動・運動会)などの企画・立案も自宅作業

をされれているのが現状です。

さらに私の場合で言えば、成績アップを狙うなら教科書を使え!【教科書レベルは最強】でも触れている通り、教科書作成の研究、ICT機器の有効性などの研究も行っていましたので、寝る直前まで仕事をしているのが日課でした。

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この様な状態をデメリットと感じるのか、楽しい仕事と感じるのかは個人差がありますが、単純に労働した分をお金に換算すると考えたのであれば、デメリットとなります。

私の場合は、こうした研究的な仕事もかなり楽しかったので、残業代がないことに不満を感じたことはありませんが、無駄な仕事も多いと感じたことがあります。

現実的に有給休暇は、長期休業中しかとることができない。

Shibuyan
Shibuyan

平日に有給休暇でもとって、USJなんかに行けたらいいなぁ…。

なんてことは、現実的ではありませんでした。

公立学校の教員は、公務員なので有給休暇も十分にありますが、全て消化しきったことはありません。

理由は単純で、

  • 自分のクラスの子ども達が登校しているのに休みをとる気になれない。
  • 有給をとったところで、代わりに誰も授業をしてくれない。

ということです。

いやいや、そんなことを気にせず、労働者の権利だから…という考えもありますが、私の場合はそう考えることはできませんでした。

公立学校の教師という仕事を「労働者」として捉える方は、仕事を楽しむことができないと思います。

 

超絶!忙しい【トイレにさえなかなか行けない】

Shibuyan
Shibuyan

トイレに行く時間も確保できないくらい忙しいです。

教師の仕事は、学校の門をくぐる前から始まっています。

登校中の子どもに出会えば、様子を見守ったり、声を掛けたり、声を掛けられたりしますから、その時点で、教師として振る舞う必要があります。

そして、職員室や教室に入れば、どっさりと仕事が待ち受けています。

  • 授業の準備・印刷などをする。
  • 提出された宿題を見る。
  • 子どもの話を聞く。

授業と授業の間に休み時間がありますが、その間も休憩するなんてことはできません。

正直、トイレに行く時間もとれないくらいで、ホッと一息つけるのが、子ども達が完全に下校した後になります。

 

行政の方針に従わなくてはいけない。

Shibuyan
Shibuyan

全く子どもに関係ない報告文書もたくさん書かないといけません。

公立学校の教師は、当然、学校の一員であると同時に、行政側の一員でもあります。

組織があまりにも大きいために、組織を守るための仕事というものもたくさんあります。

ほんの一例を挙げると、

  • いじめに関するアンケート
  • 残業時間の報告
  • ICT機器活用時間の報告 など

こんな感じ。

ICT機器(教室のパソコン・大型テレビ・タブレットなど)をどれくらい利用したかなんて、誰もが正確に計測なんてしていません。

けれども、税金をかけて購入した以上、「有意義に活用しているよ」という雰囲気を出さないといけないのです。

情熱のある先生ほど、本当は子どもに関わることに時間を割きたいと思うものですが、この様な組織を守るための仕事が相当多いのが現状です。

具体的には、【公務員】無駄な仕事が多い職場の実態と無駄が多い理由でさらに例を挙げて解説しています。

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ここまで、たくさんデメリットを挙げましたが、仕事全体をトータルに見ると、私の場合は、

楽しいことの方が多かったので、デメリットも相殺される

という印象でした。

 

これから公立学校の教師になりたい人へ「やりがいはかなりある」

今回は経済的な面から、公立学校の教師という仕事に触れてみました。

ここまで見てきた通り、経済的な面では決して素晴らしい待遇の仕事とは言えませんから、次のような結論になります。

  • お金を得るために公立学校の教師になるのはオススメできません。
  • 子ども・保護者と一緒に成長していきたいという人には、やりがいがある仕事。

仕事をする上で、お金もやりがいも共に大切ですが、私は「やりがいを感じながら仕事を楽しむ」ということは、最高に幸せなことだと思います。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

なぜか、自分のクラスでもなかった子どもが大きくなって私の家を訪ねてくることもあります。

そして、妻と話が盛り上がり、彼女と妻が二人で飲みに行くなんてこともあります。

こんなヘンテコな風景に出会えるのも教師のメリットだと思うのです。

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この記事を書いた人

公立小学校で15年勤務した後、退職。
現在は、アメリカ・香港・ペルー・インドネシアなどの小・中学生に日本の教育を届けている。日本の文化と住まい・暮らし方との関係を追求し、建材メーカーと共に日本の暮らしを研究している。
「なぜ、人は学ぶのか?」「学ばないといけないのか?」元教員の視点も交えつつ子育てに関する情報を発信している。

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