【難関学校を目指す】タブレット学習の見えにくいデメリットとは?

2022年現在では、ほぼ全ての小中学校にタブレットが配布され、タブレットを活用した授業も当たり前になってきました。

多くの情報が分かりやすい形で手に入るので、たくさんのメリットがある様に感じられますが、実際のところ、子ども達はどう感じているのでしょうか。

様々な小中学校の子ども達に、タブレット学習について感じたことを聞いてみたところ、意外と厳しい意見が多いと感じました

と同時に、私が直接指導に関わっている子どもの様子を見ても、

タブレットやPCなどのICTを多く活用しながら学習している子どもほど、ゴールまでの道のりが長い問題が解けない傾向が強くなる

ということが分かってきました。

もう少し噛み砕くと、

  • 簡単な問題解決の力を育てるには有益だが、深くじっくりと考える力を育てることは難しい。
  • タブレットを効果的に利用できる指導者は、まだまだ少ない。
  • タブレットなどを生活の中で利用することで、計画的に考える力は失われてしまう。

つまり、現在(2022年現在)のタブレット学習のシステムでは、

発展的な学習レベル(ハイレベル)まで学力をタブレット学習中心で高めるのは難しい

ということです。

どういうことか、実際の子ども達の声を交えながら、詳しく解説していきます。

「少しハイレベルな学校の受験を考えている」というご家族にとっても参考になる部分があるはずです。

私自身、教育現場にいる頃、文部科学省・教育委員会からICT活用教育の研究を委託され、様々な学校で実践をしてきましたが、当時の結論も上記の通りとなりました。

 

目次

【子どもの声】授業にタブレットが導入されてどう感じた?

なかなか厳しい意見がかなり多いというのが現状です。

以下に子ども達の声を紹介していますが、いずれも学習に対して意欲的で、ハイレベルな学習に取り組むことができる子どもの声です。

授業を聴きながら、タブレット上に板書を書いて、さらに気づいたことをメモをして提出するように言われています。最初は「面白そう」と思ったけれど、結局、タブレット上に記録することが精一杯で、授業の中身は頭に入っていませんでした。
自分のノートを他の人にもすぐにシェアできるので便利です。でも、今までは、ノートの内容を黒板に書いて発表していたので、あまり大差はないと思います。
授業中、タブレットを一生懸命見ていると、叱られることはありません。だから、勉強をしているふりをして、Youtubeを見ている人もいました。私は、そんな使い方はしませんが、そういう人がいるというのは、気持ちよくありません。
学習はプリントを使ってやっていますが、プリントへの記入が終わったら写真を撮って、先生に送信するように言われます。それなのに、授業後にプリントも回収されます。何のために写真を撮って、送信したのか、意味が分かりません
タブレットが導入されたことで、授業中動画を見る機会が増えました。理科の実験は、かなり減ってしまいました
宿題や連絡事項が、帰宅後にも配信されることが多くなりました。配信に気付かずに学校に行くと、宿題忘れ、未提出とかって言われることもあって、最悪です。

真面目に学習をしようとしている子ほど、不満を感じているということが分かりました。

ところが、そういう子ほど、大人な姿勢で「まぁ、タブレットを全員に配布してしまったから仕方がないよね。」という理解をしている様に感じます。

反対に、「少しでも楽に勉強ができたらいい」と考えている子どもには、タブレット学習の評判はいい傾向にありました。

ある子どもとのやりとりを具体的に紹介します。

 

子どもは楽をする天才!分からないことはググったらいいねん!

あなたも子どもだった頃を思い出してみましょう。

夏休みに出された多くの宿題を真面目に計画的に進めた人もいると思いますが、「答えを写した」経験がある人も多いと思います。

私は、何度も写しました。

Shibuyan
Shibuyan

宿題なんか楽しくないし、答えがあるならパパッと写したらいいやん。

どうせ、先生にバレないしね。

実際は、真面目に取り組んだのか、適当に答えを写したのかは、すぐに分かりますが、子どもはこういう思考をするのが、普通です。

ここにタブレットが導入されるとどの様になるかは、あなたも十分想像できると思います。

Shibuyan
Shibuyan

直径10cmの円の面積を求めてみよう。

はなちゃん
はなちゃん

うわぁー。

円の面積を求める公式ってどうだったか忘れちゃった。

ちょっとググってもいい?

Shibuyan
Shibuyan

ググってもいいけれど、忘れちゃったのなら、

何でその公式になったのかももう一回考えてみないとなぁ。

はなちゃん
はなちゃん

そんなこと、いちいちしなくてもググったら分かるからいいやん。

「なぜ、そんな公式になるのか説明しなさい」なんて問題をテストで見たことがないで。そんなの時間の無駄!答えが合えばそれでいいやん。

学校の先生もテストで式と答えがあっているかしか見ないやん。

はなちゃんは、有名私立小学校に通い、有名塾にも毎日の様に通っていましたが、「全く学習内容が理解できていない」ということで、最近、相談に来られた方です。

上記のやりとりは実際のはなちゃんとのやりとりです。

はなちゃんの学校の授業参観もあったので、行ってきましたが、授業でも、

分からないところは、検索して調べてみましょう。

という場面が何度かありました。

つまり、はなちゃんは、

  • 分からないことがあれば検索をする。
  • 検索結果に書かれていることをもとに答えを書けば、その場で評価してもらえる。

という最短ルートを見つけ、小学校6年生まで淡々と過ごしてきたのです。

その為、低学年ではとても優秀だったのに、高学年になり、これまでの学習した内容を組み合わせながら新しいことを考える学習になると、途端に崩れてしまったのです。

これは、はなちゃんの学びの姿勢が悪いのでしょうか。

有名校への進学率を高めたいために効率良く学習したいという学校の意図は十分に分かりますが、これでは、学習が積み上がっていくことはありません。

こうした話をすると、「タブレットの存在が悪い」と受け取る人がいますが、タブレットは学習をサポートする道具に過ぎません。

大切なのは、道具を評価するということより、どの様に道具を使うのか?ということを周りの大人が真剣に考える必要があるということです。

具体的なタブレットの活用の仕方は、アダプティブラーニングとは?タブレットが個別学習指導をしてくれる!で紹介しています。

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すぐに問題解決できるタブレットの存在は、長期的な思考を奪う?

タブレットやPCを多用してきた子ども達は、中高生になって学習に苦しみ始める傾向が強いと感じています。

その問題点は数学に顕著に現れます。

数学の問題によっては、

まずAを求めて、Aの数値を使ってBを求め、その結果から答えのCを求めないといけない

という問題は多々あります。

ところが、日常的にスマホを利用している子どもは、こんな思考をする必要はありません。

先日もある中学生と数学の問題を解いていましたが…

マナブくん
マナブくん

もうダメだ。

頭爆発する!こんなことを考えて何か意味があるの?

なんて言っていました。

それは、当然のことで、次の次の次を考えて日々の生活をする機会も少ないですから、長丁場になる問題を解くなんて、あまりにも大変なことに感じてしまうのです。


ここでは、例として「友達との待ち合わせに遅れそう!」という時の思考をスマホあり・なしの場合で比較してみましょう。

はなちゃん
はなちゃん

今日は、広々公園で遊ぶから、4時に駅前に集合ね。

けんちゃん
けんちゃん

ヤバっ!

ゲームしていたら4時前やん。

みんな待っててくれるかなぁ。

スマホ・タブレットがある場合
  • とりあえず、「10分くらい遅れる」ってLINEしておこうっと。
スマホ・タブレットがない場合
  • 4時には絶対に間に合わないから、広々公園に直接行った方がいいかなぁ。
  • 直接広々公園に行ったら、みんなは「ずっと待っていたのに…」って怒るかもしれないなぁ。
  • とにかく一旦は駅前に行ってみて、広々公園に向かった方がいいかもしれないなぁ。
  • みんな怒ってるかなぁ。ちょっと時間があるからって油断したなぁ。今度から気をつけないと。

スマホ・タブレットがなければ、この様にいろんなことを考えるものです。

もちろん、この時点でたかしくんが一生懸命考えたところで、絶対的な正解が分かることはありませんが、日常のちょっとしたことでも、子どもはいろんなことを考えるものです。

こんな経験は、子どもにとってとても重要で価値あるものですが、それになかなか気付かないものです。

 

大人の計画的な思考も奪ってしまうという事例

ある子どもが言っていた

宿題や連絡事項が、帰宅後にも配信されることが多くなりました。配信に気付かずに学校に行くと、宿題忘れ、未提出とかって言われることもあって、最悪です。

これは、大人への大きな課題だと思っています。

私は、趣味で野菜作りもしていますが、野菜を育てようとすると、少なくても半年先を見通す必要があります。

今、日本は真冬ですが、そろそろ冬野菜のシーズンが終わるので、次は、春から夏にかけて、今度はどんな野菜を育てるか計画をし、それにあわせた土作りを考えていく必要があります。

歴史的に見ても、日本の人々はこの様な思考の中で、生きてきました。

ところが、現代は、今すぐに学級全員に情報を伝えることができます。

これは、とても便利なことですが、すぐに対応ができてしまうために、教師が入念に計画を立てて、お知らせのプリントを作っておく必要がなくなったのです。

こうした風潮が強い中で、

まずAを求めて、Aの数値を使ってBを求め、その結果から答えのCを求めないといけない

という思考を子どもが身につけるのは、なかなか困難なものです。

いくら、その場で対応することができたとしても、やはり大人が長期的な視点をもっておくことは、とても大切なことです。

大人が長期的に物事を考え、実践しているからこそ「計画的に取り組むことが大切だ」ということが初めて子どもに伝わるのです。

最後に…タブレット・スマホは悪ではなく、道具としてみよう。

こうして見ると、タブレット学習には、あまりメリットがない様に感じられるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

  • ドリル的な学習
  • 既に理解したことを復習する

は十分な効果が期待できそうです。

繰り返しになりますが、タブレットは子どもの学習を支える道具であって、万能な先生でもないということを理解して付き合うことが大切だということです。

つまり、

包丁は日常生活に欠かせないものであるけれど、間違った使い方をすれば凶器になる。

ということを肝に命じておく必要があると思っています。

 

長々とお読みいただきありがとうございます。

面白い子どもが、楽をしたいと思って、NHK教育番組を夏休みに見まくったそうです。

彼の出した結論は「全然賢くならなかった」というものでした。

それを自分で試して納得したのだから私は賢いなぁ…と絶賛しましたが、そういうものです。

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この記事を書いた人

公立小学校で15年勤務した後、退職。
現在は、アメリカ・香港・ペルー・インドネシアなどの小・中学生に日本の教育を届けている。日本の文化と住まい・暮らし方との関係を追求し、建材メーカーと共に日本の暮らしを研究している。
「なぜ、人は学ぶのか?」「学ばないといけないのか?」元教員の視点も交えつつ子育てに関する情報を発信している。

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