誰でも、自分の子どもは賢く育って欲しいと願うものです。
そのために、
- 幼少期から習い事を始める。
- できるだけ早い時期から学習塾に通わせる。
- 本をたくさん買う。など…
様々なことを一生懸命にし、親自身も子どもの為になることを日々、学ぼうとされる方もたくさんいらっしゃいます。
先日、熱心に教育を勉強され、費用もかけていらっしゃる方から次の様な相談を受けました。
会話も少なくなり、学校の宿題をするにしても難しそうにしています。もちろん、成績は大きく下がってしまいました。何がいけなかったのでしょう。
もちろん、本人にも何度もあって解決策を探っているところですが、この時点で確かに言えることは次の通りです。
- 本人の考えや要望を認め過ぎると子どもは、賢く育たない。
- 先に学習する環境を与え過ぎると、子どもは深く学ぼうとしない。
- 賢い子どもに育てたいのなら、少し満たされない状態がちょうどいい。
これまで、学級担任として数多くの子ども達に関わり、不登校などの問題を抱える子ども達にも関わってきた経験も踏まえて、詳しく解説します。
地頭のいい子どもを育てるために子どもの考えを認める?
学校教育の現場でも、子育ての場面でも、
という言葉が頻繁に使われていますが、「認める」「受け入れる」という言葉の意味が人によって大きく異なり、誤解のもとになっている様に感じます。
そもそも、認めるとか受け入れるってどういう意味なの?
子どもの考えを認める・子どもの考えを受け入れるってどういう意味?
そもそも「認める」とはどういう意味があるのでしょうか。
様々な意味がありますが、「子どもの考えを認める」というのは、存在を認知する・気付くという意味です。
要するに、「あなたは、〇〇〇〇だと思うのね。」と考え方は分かったことを子どもに伝えられたら十分認めたことになります。
ここで考えに賛同してもいいし、自分は反対意見だということを伝えても「認めた」ということになります。もちろん、賛成も反対もしないと立場であっても、問題ありません。
「受け入れる」という言葉もよく使われますが、同じ意味です。
でも、テレビなんかを見ても学校で話を聞いても、子どもが言ったことを十分に聞いて、賛同してあげたり、応援してあげるのが良いって言うじゃないの?
教育評論家や教師などは公の場で万人受けすることしか言えない
私が相談を受けた時には、必ず「教育に絶対的な正解はない」とお伝えしています。
それは、当然のことで、子どもも大人もそれぞれが全く違う性質をもっているからです。
先日、あるテレビ番組で不登校で悩む保護者の方が想いを語られていました。
息子が不登校になってからと言うものの部屋にスマホやタブレットを持ち込んで、全然出て来ないんです。主人は、「スマホやタブレットが原因かもしれないから一度取り上げるべきだ」と言うのですが、心の問題なので、ものを取り上げて解決するとは思えません。
確かに言えることは、子ども不登校が原因で、夫婦関係も祖父母との関係も悪くなり、とても辛く・悲しいということです。
こんな話を涙ながらに訴える方に、
辛いでしょうが、ご主人の考えも分かる気がします。
一度、スマホやタブレットの使用を禁止してみてはどうでしょうか。
やってみないと分からないこともありますからね。
とは、なかなか言えないものです。大勢の人が見ている場では、なおさらです。
大変つらい状況だと思いますが、子どももきっと苦しんでいると思います。
本当は、スマホやタブレットをもって部屋にこもりたい訳じゃないんです。
家族関係が乱れてしまっているのも自分が原因だということもよく分かっているはずです。使用禁止にしたからと言って、子どもの心の影は変わらないでしょう。ゆっくりと焦らず様子を見ていきましょう。
この方が無難で、当たり障りがありません。
こうした風潮が広まり、「子どもの考えを認める」ということは、「子どものやりたい様にさせること」という認識をされる方が随分多くなりました。
これまでに、多くの不登校の子ども達・ご家族とも関わってきましたが、
というのが全体的な傾向です。
先に、「子どもの考えを認める」ことと「子どもの考えに賛同する」ことは違うということに触れましたが、子どもの考えに賛同しずぎると賢い子どもは育ちません。
子どもの考えに賛同するってそんなに良くないことなの?
賛同してあげてもいいじゃない。
子どもの考えに親が賛同し過ぎることで失われるものは大きい
親が子どもの考えに賛同することで、
具体例を挙げて解説します。
私はとにかく絵を描くのが大好きなの。
だから、暇を見つけては絵を描いているけれど、最近は、タブレットでも紙に描いてみたいに描けるようになったから、タブレットが欲しいの。
あと、専用のペンも必要だわ。
絵を描くのが大好きって言うのはよく分かるよ。
いつも一生懸命描いてるしね。
でも、「紙に描いているみたいに描ける」のなら別にタブレットを使わなくてもいいじゃない。本当の紙にペンや絵の具で描くのが一番リアルでしょ。
こうして、親子で意見が食い違うことが、地頭のいい子どもを育てるには必須なのです。
このままだと、はなちゃんはタブレットや専用ペンを買ってもらえそうにありません。
だから、どうしてもタブレットと専用ペンが欲しければ
- タブレットや専用ペンの必要性
- 絵を描く楽しさ など…
をあらゆる手段を使って、表現しようとします。
一生懸命語ろうとすればするほど、自分の心の中にある絵を描く楽しさやタブレットの魅力を言葉にしきれないもどかしさや、相手に伝わりきっていない感覚に悩まされるのです。
この時に初めて、
と自分から思うのです。
いくら言っても、全然、ママは分かってくれない!
だから、子どもなりに表現の仕方を考えるのです。
そして、成長の段階にもよりもますが、自分で自分に問うということもします。
なんで私は絵を描くのが好きなんだろう。
タブレットで絵は描きたいけど、何かメリットはある?
こうした状態は、子どもにとってストレスになりますが、自問自答をすることで思考が整理されるようになっていきます。
この経験は、どんなに素晴らしい授業を受けても体験することはできません。
仮に、ここでママが「絵を描くことって素晴らしいね。タブレットを買ってあげるね。」と言えば、はなちゃんは、こうした悩みを抱えることがないのです。
つまり、表現力も思考を整理する機会を失ってしまうのです。
表現力や思考を整理する力が弱いと、どうしても自己表現が上手にできません。
そうなると、簡単に自己表現ができるゲーム・SNSの世界がとても魅力的に感じるようになっていきます。詳しくは、不登校の子どもがゲームに逃げる本当の理由と改善策で解説しています。
地頭のいい子どもに育てるために幼少期から塾にいれた方がいい?
子ども将来のことを考えて、「できるだけ早くから塾に入れた方がいい?」と質問をされることもありますが、
と答えることが多いです。
そもそも学問や勉強は、どうやって生まれたのか?
学問や勉強というのは、
というのが原点です。
例えば、数字がなかった頃には、こんな問題がおきる訳です。
「たくさん、美味しそうなお肉があるらしいなぁ。山で採れたものをいっぱい持っていくから、お肉をちょっと分けてくれないか?」
「いっぱい」「ちょっと」は、個人的な感覚なので、これでは困ったことがおきるわけです。
これをより明確にするために数字が必要であるということで、新しい概念・考え方が誕生したのです。
現代に置き換えてみましょう。たくさん困ったことがあります。
- 原子力発電の汚水処理の問題
- 二酸化炭素排出量の規制の問題
- 原油価格高騰・電気代の高騰の問題 など…
ですから、専門家・研究機関は、問題解決に向けて新たな挑戦をし続けています。
ところが、現代の子ども達はどうでしょうか。
あまり困ったことがない子どもは賢くならない
現代の日本の子ども達の多くは、非常に満たされています。
- 食べ物は十分にある。
- 衣類の心配はない。
- 冷暖房完備の住まいで生活することができる。
- 面白いゲームもできて、動画も見ることができる。
「やりたいこと」や「欲しいもの」が多少あるものの、生きていくには困らない程度には、満たされています。
この状態では、なかなか何かを学ぼうという気持ちにはなりにくいものです。
「英語を学ぶ」という具体例を見てみましょう。
- 「日本で暮らし、日本の学校に通い、友達も日本人」という子ども
- 「日本で暮らしていたが、親の仕事の関係で突然アメリカで暮らすことになった」という子ども
どちらが、英語を学ぼうとするかは、明らかです。
私は毎週、突然アメリカに暮らすことになった小学生と話をしていますが、こんなことを言っていました。
当たり前だけど、アメリカの学校の授業って全部英語やで。
なんとかなるかなぁと思ったけれど、さっぱり分からへんねん。
マジでヤバイよ〜。
彼女は、小学校3年生ですが、真面目に英語の勉強も始めました。
まさに、学問・勉強の誕生の原点に触れることができた瞬間です。
賢く育って欲しいからと幼少期から塾に入れる場合は、注意が必要
勉強や学問の誕生の原点に触れると、
だと分かります。
子ども自身が何も困っていない状態で、いろいろなことを学ぶ様に言われるためです。
これは、まぁまぁお腹一杯の状態なのに、「もっとおかわりをしなさい」と言われるようなもので、これを続けると、「全てが与えられるもの」として子どもは認識してしまいます。
子どもの頃、なかなか厳しい環境で育った方にとっては、嘘の様な話に聞こえるかもしれませんが、勉強をするにしても、
- 問題も解き方も先生が教えてくれるもの
- 宿題も先生が準備してくれるもの
- 難しい話は先生が分かりやすく解説してくれるもの
と、いう状態になってしまいます。
この様な状態で、自ら学ぶことが大切と言ったところで、全く理解が得られません。
ですから、幼少期から様々なことを学び、経験することは重要であっても、敢えて子どもが「何か足りないなぁ」と感じる部分も残しておくことは、必須なのです。
地頭がいい子どもを育てるために母親ができることのまとめ
長くなってしまったので、簡単にまとめます。
ここに全ての答えが詰まっています。
大人も仕事や家庭生活をしていて、何か困ったことが起きれば学ぼうとします。
もちろん、社員研修の様に最初から準備された学びの場もあり、それも意欲的に学ぼうとする方もいらっしゃいますが、やはり一番学ぼうとするのは、「苦悩を解決したい」と思った時です。
当然、子どもが苦しみ、悩んでいる姿を見るのは辛いことですが、悩む前にそれを防止する策を打ちすぎることは、自らなにかをしようとする機会を奪ってしまうことになります。
「防止策を打つ・優しい言葉をかける」ということも時には大切ですが、長い目で見て子どもにとってプラスになるのだろうか?ということも、少し考える余裕を親は持ちたいものです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
毎日、海外で暮らしている子ども達と話をしていると、日本はかなり豊かな国だと痛感します。
そんな素晴らしい環境の中にいるのだから、ちょっと足りないことは、力強く乗り越えて欲しいと思うのです。
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