中高生になると、本格的に勉強をして定期テストに備えるという人がほとんどです。
けれども、定期テストや模試が終わった途端、多くの人は、
やっとやなぁ。これで勉強地獄から解放された!
こう感じているのが正直なところでしょう。けれども、世の中をよく見ると、
- 勉強が好きと言って、何かを学んでいる大人が意外と多い。
- テストに関係になく、好きな教科の勉強を楽しくしている中高生もいる。
ことが分かります。
先日、ある中学生の親子にこんな質問をされました。
- なぜ、試験とか出世とか関係なくても勉強をする大人がいるのか?
- 1教科でも楽しく勉強できるようになる方法はないのか?
こうした質問を受けたことを機に、この質問について考えを整理してみました。
この答えが分かると、日々の子どもへの言葉かけも随分変わってくるはずです。
大人になると立場に関係なく勉強が好きになる人が増える理由
大人の人から、
- 本当は勉強って面白い。
- 本当はもっと勉強したいけれども時間が取れない。
などの言葉を聞いたことがあるはずです。あなた自身も、もっと勉強したいと感じたことがあると思います。
ところが、子どもたちからは「もっと勉強をしたい」「勉強をしたいけれども時間が足りない」などの言葉を聞くことは、ほぼ皆無です。
子どもと大人の勉強に対する意識は何が違うのでしょうか。
そもそも本当に大人は勉強したいと感じているのか?
資格試験に関する授業の他に、web制作・投資・料理・発酵など、あらゆるジャンルのことが月額1000円程度で無数に学べる【オンスク.JP】 でのアンケート結果は上記の通りでした。
でも、こういうサービスを利用している人ってもともと勉強好きでしょ。
そんな人を対象にアンケート調査をしても、多くの人が「好き」って答えて当然じゃないの?
ただ、このアンケート結果で注目したいのは、次の2点です。
- 勉強をするのが嫌いと答えた人のほとんどが「仕事のため」に勉強していると回答。
- 勉強が好きと答えた人のほとんどが「自分のため」に勉強していると回答。
この結果から多くのことが見えてきます。
さらに深く感がてみましょう。
勉強をしたら出世できる・給与がUPする!と言われたら…
例えば、「FP(ファイナンシャルプランナー)2級の資格を取れば、給料がUPする」と言われると、どうでしょうか。
当然、給料UPは嬉しいことですが、金融・経済などに関心がない人にとっては、いくら給料がUPすると言われても、学ぶことに楽しさを見出すのは難しいでしょう。
つまり、スキルアップだけのために学ぶというのは、どうしても苦痛が伴うのです。
では、反対に、「自分のために学ぶ」について見ていきましょう。
英語で話ができるようになりたいから学ぶ
私自身、中高生の頃は英語が大嫌いでした。
もともと理系思考が強かったためか、英語を学ぶのにあまりにも「例外が多く」「文法上の定義が曖昧なものが多い」ことが許せなかったのです。
ただ、大学に進学するために仕方なく勉強していたのです。
ところが、現在は、日々海外の子ども達と一緒に勉強をしているために、
と思えるようになりました。
それは、海外の子ども達と接している中で、
- 英語に置き換えて説明するとよく伝わる。
- 下手な英語でも一生懸命伝えようとすると、一生懸命聴こうとしてくれる。
- アメリカンジョークなどを伝えると大笑いしてくれる。
こうした楽しいことがあるために、改めて英語やフランス語を学んでみたいと思えるようになったのです。
こんなことを考えると、英語の文法上の例外も認められるようになったり、「なぜ?」という部分をたくさん考えられるようになりました。
英語はなぜ複数形があるの?【文法嫌いだからこそ考える】では、なぜ、英語は単数・複数にこだわるのか?なぜ、複数形にしない例外があるのか考えています。
ここでは、英語を例として挙げてみましたが、他にも様々なことが考えられます。
- ファイナンシャルプランナーとして、アドバイスをしたら喜んでくれた。
- Web制作をしていると、〇〇なことはできないか?と相談された。
- 節約レシピを公開していたら、喜びの声をたくさんもらった。
こうした経験があれば、さらに学びたいと思えるようになるものです。
つまり、
- 自分のために学ぶ。
- 学んだことが誰かの為になり、喜んでもらえる。
これを積み上げていくことで、勉強が好きになっていくのです。
大人の場合は、様々な経験をしていますから、その経験自体が多くの人に役立つヒントとなる場合も多いので、もっと誰かに喜んで欲しいと思った人は、さらに自分に磨きをかけるのです。
ところが、子どもの場合は、「勉強が好きになる」とは程遠いことを、親・学校・塾から言われ、自分自身でも実践してしまっているのです。
【大人の行動から学ぶ】子どもが勉強が嫌いになる要素
大人の勉強に対する意欲の根源の一部が分かったと思いますが、子どもはどうでしょうか。
これまで、学校などを通して様々な子どもと関わってきた経験からすると、勉強が嫌いになってしまう言葉を、親も先生もかけていることが分かります。
具体例を挙げながら、どう改善するのか解説します。
子どもが勉強嫌いになってしまう言葉
私も子ども達に次の様な言葉を掛けたことがあります。
- 勉強しないと将来食べていけない。
- 勉強しないと希望する学校に進学できない。
- 学級平均は、全国平均よりも大きく上回った!さすがだなぁ。
日頃、当たり前の様に耳にする言葉かもしれませんが、ここには、先に触れた、
- 自分のために学ぶ。
- 学んだことが誰かの為になり、喜んでもらえる。
この要素が全く含まれていないことが分かります。
つまり、こうした言葉掛けをすればするほど、試練・忍耐・根性的な学習になってしまう可能性が高まるということです。
そして、さらなる問題点は、平均・偏差値などから評価することで、子ども自身がますます勉強嫌いになってしまう行動をとるということです。
競争をすることで子どもは気づかない内に勉強嫌いになる
学校の成績・順位・偏差値・平均点…どれも自分の実力を客観的に知るには、重要な数値です。
ところが、こうした数値を意識すればするほど、
ということが起きてしまいます。
子どもからすれば、常に競争の中にいる訳ですから、「敵に勉強を教えるなんてことはバカがすること」ということになってしまいます。
つまり、「誰かに知っていることを教えて感謝される」という機会を激減させてしまうのです。
実際に、有名進学校の授業などを拝見する機会もありますが、面白い問題の解き方をしているなぁと思う子どもが発表するなんてことは滅多にありません。
そう言った子の本当の心情は分かりませんが、どこかに「いい方法を教えたら損」という気持ちがあるように感じます。
じゃあ、私たち親はどうしたらいいの?
子どもが勉強好きになるために親ができること
子どもが勉強好きになる可能性を高めるためにできることは以下の通り。
- 子どもが学んだことを親が心の底から感激しながら聴く。
- 子どもには、学んだことはたくさん教えてあげるのが良いと伝える。
- 勉強と収入・社会的地位を結びつけない。
それぞれ、詳しく解説します。
子どもが学んだことを心の底から感激しながら聴く
今日さぁ、割り算の筆算を勉強したで。
なんとなくできるようになったけど難しいなぁ。
大人からすれば、割り算の筆算を勉強したと言われても、感激する要素なんてないと感じる方が多いと思います。
ところが、この時に、
- 自分が初めて割り算の筆算を学習した時はどうだったか?
- 割り算の筆算を考えた人はどんな思考をしたのか?
こう考えると、感激するポイントが生まれます。
こんな変な形で書くといいって誰が考えたんだろう?
こんな方法、教えて貰わなかったら計算めちゃくちゃ大変やね。
考えた人ってスゲーなぁ。
子どものでき具合などは、一切気にしません。
大抵、歴史的なことに触れるようにしているのは、私自身が現在に至るまでに、どの分野の研究も大変だっただろうなぁ…と思うからです。
学校の勉強には意味がないという中高生へ【何が役立つか分からないから学ぶ】には、パンの誕生について紹介しています。たかがパンかもしれませんが、私は心が動きます。
学んだことはたくさん教えてあげるのが良いと伝える。
もう20年以上、教育に関わっているなかで、
ということです。
よく、アウトプットが大切だと言われますが、誰かに教えるという行為は最高のアウトプットとなります。
実は先日、ある保護者にこんなことを言われました。
こういうこともありますが、大切なのは、テスト良い結果を出して、優越感に浸ることではなく、友達に「わりがとう」と言われることなので、結果は一切気にしていません。
また、受験勉強の開始はいつから?【遅すぎた高校生の返り咲き事例】には、友達に勉強を教えまくりながら、高校3年生になってから大学進学を希望した子どものことを紹介しています。
参考にしてください。
勉強と収入・社会的地位を結び付けない
大人の事例でも挙げた様に、
ことが分かります。
その為、「勉強しないと大学に行けない」とか「食べていけない」とは、言わない様にしています。
そもそも、「有名大学を卒業すれば良い会社に勤めることができる」というのは、過去の話であって、正常な社会では、不自然なことです。
ビジネスをするというのは、誰かの問題を解決してその対価としてお代をいただくというのが基本ですから、学び続ける姿勢が最も大切だということです。
中学2年生の教科書に「学ぶ力(内田樹)」という文章が掲載されていますが、そこでも本当の学力というものは何かが書かれていますので参考にしてください。
また、内田樹氏の「街場の教育論」は教育関係者・親が一読しておきたい1冊です。
本当に学ぶとはどういうことか?大学のあり方など多くのことを考えさせてくれた本です。
「勉強しないと〇〇〇〇になってしまう」これは、恐怖感を煽るものであり、即効性が期待できますが、恐怖で人の心の本質を変えることはできません。
そんなことは、歴史を少し学べは分かることですが、学校や塾によっては、恐怖で結果を得ようとされているところもあるのが現実です。
もう少し長い目で見られるゆとりが必要じゃないかなぁって思います。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
私の授業を受けているある小学生が、引っ越しの関係で授業が受けられなくなり、家で大泣きしたそうです。
そんな風に感じられる子どもが増えたらいいなぁ…って思いながら、今夜も少しだけ英語の勉強をして眠ります。
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