ある私立中学校の保護者の方から、こんな質問を受けました。
子どもの将来展望を担任の先生が十分に理解した上での話であれば、納得できそうですが、担任の先生は、うちの子の将来展望をご存知ありません。
にも関わらず、なぜ、内部進学の専願を担任の先生は勧めるのでしょうか。
その上、「併願で内部の高校を受験する場合、一度しか受験することができできません。ですから、併願で受験することは、大きなリスクになります」とまで言われました。
私の場合は、教育を過度にビジネス化することは、何も生み出さないと考えているので、この話を聞いて、残念に思いました。
問題点は既にお分かりだと思いますが、
- 子どもの将来展望・親の意向などを考慮せずに進路について提案している。
- 併願のリスクを前面に押し出している。
という点です。もはや脅迫のように感じられますが、教育に関わっているとこの様な話を聞くことは多々あります。
専願で受験させて、確実な顧客を確保したいだけでしょ。
保護者も子ども自身も、はなちゃんの様に感じていながらも、やっぱり不安なので、専願にした方がいいかなぁ…と悩まれていました。
この様な場合、私は次の様な考えを伝える様にしています。
- 大きな理由がなければ、この高校を受験の選択肢から外す(併願でも受験しない)
- 子ども自身がもう一度、将来について考え、進学する学校を考える。
なぜ、この様な方法を勧めるのか、詳しく解説します。
【ブラックな話】内部で専願を勧める学校は教育力が低い
ちょっと暗い話になりますが、私が様々な中学校・高校の授業、子ども達の様子を実際に見て感じた結論が、専願を勧める学校は教育力が低いということです。
本当に教育力の高い学校は、興味をもつ人が勝手に集まってくる
進学先を考える時に、オープンキャンパスに行ったり、学校HPを参考にすることもありますが、口コミの力もかなりの影響します。
実際に「入学して本当に良かった」と感じているご家族が多ければ、良い評判が広まりやすくなります。
ここである高校のデータを見てみましょう。
合格者 | 入学者 | 歩留まり率 | |
A高校 | 2,709 | 492 | 約18% |
B高校 | 539 | 258 | 約48% |
A高校は、たくさんの人が合格しましたが、ほとんどの人が入学をしていません。
もともと滑り止めとして受験した人が多かったのではないか?と推測することができます。
つまり、多くの人が一番に行きたい学校になれていないという可能性があるということです。
実際に、私はA高校・B高校共に学校の様子、授業の質を知っていますが、A高校をお勧めする気にはなれません。
これは学校側にとって深刻な問題で、次の様な悪循環が生まれてしまいます。
また、A高校で働いている先生に話を伺ってみましたが、
- どうやって受験者数を増やすか、専願者を増やすかの議論はある。
- より楽しい授業、興味を引き出す授業をするのかの議論はない。
とのことでした。
これを飲食店に置き換えて考えてみると、
ところが、こうした中身を変える努力をしなくても、「専願」を勧めることで、なんとか人を集めることができてきたために、その習慣が今も継承されているという点が問題です。
学校が掲げる進学実績は、学校の影響がどれだけあるか?
また、高校から大学への進学実績を大きく掲げて、学校の教育力の高さをアピールするケースが多々見られますが、注意が必要です。
私立のC高校も入学者がだんだんと減ってきたので、大学進学の状況を大きくアピールし、内部の中学の生徒には強く専願を勧めています。
実際のC高校の進学結果の一部を見てみましょう(上位層の部分を抜粋)。
国公立大学 | 京都大学 | 1名 |
京都府立大学 | 1名 | |
私立大学 | 上智大学 | 7名 |
立命館大学 | 19名 | |
関西大学 | 6名 |
パッとみた感じ、学力面ではしっかりと教育されている印象があるかもしれませんが、
- 私立大学の合格者の半数弱は推薦枠。
- 国公立大学の受験は5教科・上智大学の受験は2教科。
ですから、京都大学・京都府立大学の合格者の学力と各私立大学の合格者の学力には雲泥の差があります。
つまり、この場合、2人の生徒が必死に努力した結果、国公立大学に入れたということで、学校の教育力のおかげではないということです。
もし、学校にしっかりとした教育力があれば、次の様な感じの結果になるはずです。
国公立大学 | 京都大学 | 1名 |
京都府立大学 | 1名 | |
神戸大学 | 2名 | |
兵庫教育大学 | 1名 | |
鳥取大学 | 2名 | |
私立大学 | 上智大学 | 7名 |
立命館大学 | 15名 | |
関西大学 | 6名 |
一般に学力が高いと言われる有名国公立大学〜地方国公立大学がバラバラと入ってきて、イメージで言えば、短距離走で突出した人がなく、順々にゴールする感じになります。
実際にC高校に通っている生徒・保護者と関わっていますが、学校の勉強が厳しい状態になると、塾に通うように学校から勧められたと話していました。
大学への進学状況を見て、C高校を選択された方にとっては、辛い話です。
【進路を真面目に考える】私立高校の専願を勧められたら…
こうしてみると、学校経営のためにお勧めの進路が提案されているケースが多々あることが分かります。
A高校の場合は特に顕著で、子どもの将来展望すら学校が知らない状態でした。
この様な場合、どう考えればいいのでしょうか。私の考えを紹介しておきます。
歩留まり率が低い学校なら専願にする必要はない
先に例に挙げたA高校の場合、合格者に対して実際に入学する人が少ないので、定員よりもはるかに多い人が入試で合格することになります。
昨年度は、募集定員(400人)に対して、合格者(2,709人)でした。
ポイントは、ほとんどの人が、滑り止めのような意図で受験しているということを学校もわかっているということです。
にも関わらず、「併願で受験することは、大きなリスクになります」と保護者や生徒に伝えるのは、脅迫の様にも感じます。
少なくとも過去のデータを提示して、どの程度のリスクか説明して欲しいものです。
こうしたことを踏まえて、
- この学校で、何が何でも学びたいこと・利用したい環境があるのか?
- 他の学校で、学びたいことができないのか?
を真剣に考える必要があります。
もちろん、立地・経済的なことも考慮する必要がありますが、私の経験から言えば、歩留まり率が30%を切る学校は、他校とも大きな違いがないために、選択肢を広げて、進路を考えたいものです。
でも、併願にして受験に失敗したらどうするの?
ここ一番の大勝負の緊張感が人を育てる
確かに、「専願」にして受験した方が、合格しやすくなります。
ところが、
というところまで見ておく必要があります。
もちろん、専願で入試を受けると内部生の場合は、大きな安心感が得られますが、子どもにとって「とんでもなく緊張するここ大一番の勝負」を経験する機会を逃してしまうことにもなります。
この緊張感を「ストレス」を言えば、悪く聞こえますが、この緊張感は、子どもを大きく成長させるチャンスでもあるということです。
今回触れた学校の様な場合は、併願にしても十分合格する可能性はありますから、事前に準備をしっかりとして、選択肢を広げておきたいものです。
そもそも順風満帆な人生がいいのか?【逆境が人を育てる】
いつも、直接お会いした方には伝えていますが、数冊の伝記を読めば、いかに逆境が大切かが見えてきます。
どの伝記を読んでも、
ということが分かります。
誰もが絶望・大ピンチを味わってきたことは確かなことです。
私自身の場合で言えば、浪人→大学(留年)→公立学校教諭→フリーという生き方になっていますから、一般的な方からすれば、ほぼ大ピンチの人生ということになるでしょう。
ただ、安定していると言われる公立学校教諭の世界を振り返ると、当時は一生懸命だったつもりですが、まだまだ甘かったと今では感じられるのです。
実際に、公立学校教諭の世界は、経済的な安定性は抜群ですが、それゆれに、保身の色がどんどん濃くなってきました。
守りに入ると、大きく成長することはできないことは、誰もが感じたことがあるはずです。
具体的にどの様なことをして保身をしているのか…詳しくは、【公務員】無駄な仕事が多い職場の実態と無駄が多い理由をご覧ください。
ですから、親であれば、
ことがとても大切だと思うのです。
そして、学校側は、本当の意味で子どもが成長するには、何が必要なのか考える必要があります。
「進路指導」という言葉が、今は「要領よく受験に合格するための指導・戦略作り」になってしまっています。
要領よくその場を凌げることが本当に社会のためになるのか?それが問われている気がします。
意外と国公立大学には、どん底を味わった人も多いものです。
詳しくは、国公立大学と私立大学どっちがいい?【隠れたメリットを解説】の記事をお読みください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
教育って人を育てるものって誰もが言いますが、ビジネス化しすぎたことで、苦しんでいる子どもが増えている気がします。
ほぼ大ピンチの人生の歩んでいますが、高校を卒業してしまえば、年齢なんて関係ないので、ゆっくり歩む人、早く歩む人、それぞれいていいと思います。
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